「ハードディスクとCDは同じものか」。この問題に関して、The BeatlesとSteve Jobs氏の考えが食い違っていた。
そして、この問題をめぐってApple ComputerとThe Beatlesの楽曲を管理するApple Corpsが争っていた裁判で、判事は結局Apple Computer側に優位な判決を下した。法律の専門家らは、英国時間8日にApple ComputerがApple Corpsに対して勝利を収めたことについて、1991年に両社が交わした合意の内容に対する判事の解釈によるものだと述べている。この合意書では、Apple Computerが楽曲をテープやCDなどの物理メディアに収めて配布することが禁じられていた。
Anthony Mann判事がApple Computerに有利は判決を下したことで、同社は引き続き英国でのiTunes Music Storeの運営に自社の名前とロゴを使うことができることになった。なお、この裁判は控訴審に持ち込まれる可能性が高い。
両社は1991年に、それぞれの商標の使用方法をめぐって争った裁判の結果を受け、10年前に交わしていた合意書に修正を加えた。この時、Apple Computerは、Apple Corpsに対して2700万ドルを支払うとともに、音楽配信事業に参入する場合、Apple Computerの名称とロゴを使用しないことに同意していた。
しかしApple Corpsは、Apple ComputerがiTunes Music Store(iTMS)でまさしくこの合意に違反する行為を行っていると主張し、2003年にApple Computerを訴えた。音楽ファンは、iTunesで楽曲を購入したり、それをPCにダウンロードできる。
Apple ComputerのiTunesやiPodなどの影響もあって、音楽のデジタル配信が盛り上がりを見せているが、The Beatlesはこの流れに抵抗しているもっとも著名なアーティストだ。
Apple Computerは時折、iTMS限定のアルバムや楽曲を短期間配信することがあり、また自社とそのロゴをコンテンツと関連づけているが、Apple Corps側の弁護士は、これが1991年の合意で禁じられた行為にあたると主張していた。それに対し、Mann判事は判決文のなかで、「Apple Computerがそのロゴを楽曲コンテンツ配信サービスで利用することは、コンテンツ上、もしくはそれに関連付けて利用されていない(状況下にある)場合には容認される行為だ」とした。
さらにApple Corps側は、両社による契約の対象範囲には「あらかじめ録音されたコンテンツを配布する物理メディア」と「有形無形」の手段によって配布されるコンテンツが含まれると考えていた。Apple Corpsによると、iTMSはインターネット経由で目に見えない形でコンテンツを配布しており、またPCやMac、iPodに搭載されたハードディスクやフラッシュメモリは物理メディアにあたるという。
だが、Mann判事はこの解釈を認めず、Apple ComputerはiTMSで配信されるコンテンツの一次提供者ではないため、同社は1991年の合意書に違反していないとするApple Computer側の主張を支持した。同判事は、「Apple Computerがロゴを使用しながらApple Corpsの領域に進出する場合は、Apple Computerが楽曲の配布もしくは供給元であることをロゴの使用によって示唆する必要がある。ただ、同社はそれをまだ一度もしていない(iTMSのなかや)ダウンロードした曲に含まれる情報のなかでは、各種の権利に関する所有権の表記が常に適切に行われている」とした。
確かにハードディスクはストレージメディアだが、iTMSで販売されるコンテンツの配信には一切関係がないと、同判事は判決文のなかに記している。「(iTMSで)配信され、何らかのデジタル形式で保存されたファイルや、それを保存するハードディスクが、『物理メディア』であり、あらかじめ録音されたコンテンツを『配布』するものだとするには、相当な曲解が必要だ」(Mann判事)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス