WPFは、Vistaと、現行のデスクトップ版WindowsであるWindows XPでも動作する。MicrosoftのKey氏によると、同社は、WPF/Eがあることで開発者が自社のツールを使ってVista用のアプリケーションを書き、それにある程度の修正を加えてほかのOSやブラウザにも対応させてくれることを期待しているという。
「ユーザーエクスペリエンスの最もリッチなほうに合わせられるようにするのが狙いだ。これはVistaやXPを搭載したマシンの90%に相当し、また同じデザインとコードのサブセットもターゲットになる」(Key氏)
Vistaとそれに付属するツール類が提供されれば、それらを使って開発した本格的なVista向けアプリケーションを、WPFを使ってWindows版のInternet ExplorerやFirefox上で表示できるようになる。
WPF/Eがあれば、JavaScriptや、Microsoft専用のC#やVisual Basicなどの言語を選び、MacのSafariやFirefox向けに機能を多少削ったフロントエンドも開発できる。視覚的なレイアウトや、グラフィックの各種要素はXAMLで構築する。XAMLは、開発者とデザイナーのやりとりを容易にすることを目的としたMicrosoftの新しい言語だ。
WPF/Eアプリケーションを表示するには、マシンにブラウザのプラグインが必要になるが、これはアプリケーションにあらかじめ同梱して配布することが可能だと、Key氏は言う。Microsoftはまた、インタラクティブなウェブアプリケーション用に「Atlas」と呼ばれるツール類も提供する。ただし、これらはWPF/Eアプリケーションほどグラフィカルなものではなく、ベクター画像やビデオなどの表示もできない。
Key氏によると、Microsoftは、WPF/Eのライセンス関連の詳細を数カ月以内に公表するという。「JavaやSymbianベースの携帯電話、そしてLinuxも含め、あらゆるものにXAMLとWPF/Eをサポートしてもらいたい」(Key氏)
Burton GroupアナリストのPeter O'Kelly氏は、Microsoftが集めているユーザーインターフェースツール類は、ウェブアプリケーションのデザイナー市場に対する同社の意気込みを浮き彫りにしているという。これまで同社はデザイナーへのアピールに完全には成功していなかったと同氏は指摘している。
「Microsoftは物分かりが良くなったと思う。1998年ごろは、もっぱら自社製品の利用を勧めるばかりだった。同社はアプリケーション開発者に対し、『Flashを前提にするな』と呼びかけていた」(O'Kelly氏)
Adobeは、少なくとも今のところ、この戦略を懸念していない。AdobeのTodd Hay氏(プラットフォームマーケティングおよびデベロッパーリレーション担当ディレクター)は、「デザイナー(向け製品の)市場では、われわれのほうが大きなシェアを握っている。そして、われわれはこの市場を引き続き拡大していく」と述べている。
「われわれの戦略は、予測可能で一貫した操作性を実現することだ。開発者は、OSによって用意されるのがフルセットかサブセットかを気にする必要がない」(Hay氏)
HayはまたAdobeが最新のFlashアップグレードに成功していることも指摘した。この6カ月間で半数を超える顧客がアップグレードしたという。
さらに、MicrosoftがAdobeの顧客ベース切り崩しをねらう間に、Adobe側でも反撃にでている。同社は「Flex」というさらに強力なFlashオーサリングツールの開発に投資しており、またオープンソースのEclipseとの提携も行った。Microsoftの代表的開発ツール「Visual Studio」と競合するEclipseの製品はJavaプログラマーの間で高い人気を誇っている。
Adobeには先行者としての強みがあり、またデザイナーは忠実なMacユーザーであることが多いのも同社にとって有利な点だと、Adobeの幹部らは指摘している。Microsoftでは来年第1四半期にExpressionツールを出す予定だが、デザイナー向けのこのツールはWindows版のみの発売になると見られている。
Novellで「Mono」プロジェクトの開発責任者を務めるMiguel de Icaza(同社バイスプレジデント)は、WPF/Eにいくつかの強みがあると述べている。Monoプロジェクトでは、Microsoftの「.NET Framework」を利用するプログラマーがWindows、Linux、UnixのどのOS上でも動作するアプリケーションを構築できるようにすることを目指している。
しかし、同氏はMicrosoftのユーザーインターフェース戦略は滑りやすい坂道のようなもので、そのために開発者がWindowsやInternet Explorerにしか対応しないアプリケーションを書いてみたい誘惑に駆られるおそれがあると指摘する。
「一般向けのウェブサイトでは、この点は問題にならないだろうが、社内開発者や特定の顧客を相手にしている開発者は、『特別な機能』に依存して、『このページを見るにはIEが必要です』といった流れを続ける可能性が高い」と同氏は電子メールに記している。「今後は『これを動かすには、完全なWPFを必要とするため、Vistaをお使いください』となることだろう」(Icaza)
WPFを利用すれば、グラフィック関連のハードウェアの機能をあますところなく引き出せるほか、Vistaに組み込まれた通信やワークフロー関連の機能も活用できるというメリットが得られるとO'Kellyはいう。
「Microsoftでは、Vistaの機能をすべて使ってできることの魅力が、Vistaではできないことへの不満を大幅に上回ると開発者が気づくことに、ひそかに賭けている」
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