「放送と融合するのはむしろモバイル」、イー・アクセス千本会長が講演 - (page 2)

●モバイルブロードバンドの可能性

 周知のように固定通信では、日本が世界で最も進んだブロードバンド環境に ある。これら高速通信に慣れた消費者に対してモバイルでもブロードバンドを 提供することが、これからの大きなビジネスになる。新規参入のモバイル通信 事業者として千本氏が狙うのは、あくまでもモバイル通信におけるブロードバ ンド化だ。

 日本にADSL環境がなかった2000年には、ISDNの64Kbpsしかなかった。それが わずか36か月で、世界でも最高レベルの数10Mbpsというブロードバンドが一般 化した。しかもこれが数千円という安価で提供される。「この2000年時代の固 定通信環境と同じ貧弱な環境が、現在のモバイル通信環境だと考えればわかり やすい。この環境を、5年以内に世界に冠たるモバイルブロード環境にしたい」 ということで、千本氏は移動体通信の専門子会社としてイー・モバイルを設立 した。その意欲は第二電電設立当時を上回るものがあるようだ。

●世界トップから転落した日本の携帯電話

 「先日、スペインはバルセロナで開催された世界最大のモバイル関連展示会 を見ても、日本企業は全く精彩がない。世界から数万人も集まるためにバルセ ロナの街全体が交通渋滞になるほどの大きな展示会だ。にもかかわらず、日本 のブースには全く魅力がなく人が集まらない」と、日本の携帯電話産業は、世 界から大きく水をあけられる一方だと千本氏は主張する。しかしこの事実を直 視する関係者が極めて少ないことが千本氏の不満だ。

 展示会における一番人気はエリクソン、次にノキア、モトローラ、サムスン、 LGなどが続く。さらに第2のサムスンとして注目されているのが、中国のファー ウエイだ。日本は出展すらしていないメーカーも多く、出展しても集客力は弱い 。今から7〜8年前、日本のNECや松下電器が世界の携帯電話市場を席巻した。当 時は欧州でも北米でもまず目にする携帯電話は日本のメーカーであった。それが 今では1位エリクソン、2位ノキア、3位サムスンが御三家。NECやPanasonicなど 日本国内では力のあるメーカーも世界ではすでに微々たるもので、日本メーカー すべてを合わせても10%に満たないのが現状だ。ここ数年間、世界の携帯電話市 場で日本メーカーはトップからその他大勢へと転落したことは事実だ。

●世界のモバイル産業はこれからが本番

 「今後の産業としては携帯電話関連が唯一大きな伸びが期待できる分野なの に、日本のメーカーの携帯電話事業は悪化する一方。日本の携帯電話メーカー はすべて赤字なのに、エリクソン、ノキア、サムスンといった海外のメーカー は携帯電話事業で堂々たる利益を上げている。日本メーカーはどこかで戦略を 間違ったとしか思えない」とする千本氏。ではどこで戦略を間違ったのか?  「NTTドコモの責任は大きい。世界のほとんどの国が第2世代携帯はGSM標準で 進んだ時代に、NTTドコモは独自規格であるPDCを選択した。この選択によって、 世界の国で使えている携帯電話が日本では使えない。日本の携帯は海外では使え ない。これは明らかに国家としての戦略の間違いで、決定的で致命的な戦略ミス を犯した」と指摘した。

 では今後、ITの主戦場である携帯電話産業で日本が復活する可能性はあるの か。「この2−3年以内に日本のメーカーが世界市場に新規参入する気で革新的 な取り組みを行わないことには、世界の携帯電話市場で復活することは永遠に あり得ない。しかし世界のモバイル産業はこれからが本番。新規参入を阻止す ることのない自由な競争の下で国際戦略を進めることによって、進化するモバ イル分野で日本が再び主導権を握ることは充分に可能だ。そのための最大のポ イントが、モバイルブロードバンド環境の早急な実現にあると考えている」と 千本氏は締めくくった。(倉増 裕)

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