「Windows Vistaの発売延期で、自分にどんな影響があるのか」。米国時間21日には、誰もがこの疑問を口にしていた。
Microsoftは21日に、同社の新オペレーティングシステム(OS)「Windows Vista」の発売日を2007年1月に延期すると発表した。同社はこの発売延期について、コンピュータメーカーや小売店などのパートナー各社の利益を考えて決定したと説明したが、多くの人々が同社の考えに異議を唱えている。
「(Vistaの発売延期は)業界全体の利益にならない」とEnvisioneering Group(本社:ニューヨーク州シーフォード)のアナリスト、Richard Doherty氏は言う。「周辺機器メーカーのためにも、グラフィックチップメーカーのためにも、ノートPCメーカーやデスクトップPCメーカーのためにもならない。だれもがVistaへのアップグレードをあてにしていた」(Doherty氏)
Microsoftは、Vistaの発売延期によって第4四半期のPCの売上が落ち込むとは考えていないと述べたが、Doherty氏をはじめ多くの人々が同社と異なる考えを示した。
「これで、2006年のホリデーシーズン(のPC売上)は諦めなければならないだろう。そして、ノートPCメーカーにとってはこの延期が最終収益に甚大な影響を与えることになる」とDoherty氏は述べ、さらに「第1四半期は、1年のうちでPCの売上が最も伸びない時期だ」と付け加えた。
Enderle Group(本社:カリフォルニア州サンノゼ)のアナリスト、Rob Enderle氏も、Microsoftの(Vistaの発売延期の)決定はコンピュータメーカーにとって大きな打撃であるとの見解に同意した。「最近は、消費者市場は第4四半期しか大きな売上が期待できない市場となっていることから、Vistaの発売延期でPC市場は深刻な打撃を被ることになる。それを回避する方法はない」(Enderle氏)
PC購入予定者は、1月にVistaを搭載した新型コンピュータが出ても、それほど熱心に購入したいとは思わないだろう、とEnderle氏は予想している。
Enderle氏は「多くの売上が、単に先送りされるのではなく、永遠に失われることになる」と述べ、さらに「消費者は(発売が)第4四半期から第1四半期に変更されることを好ましく思っていない。この変更で、購買が1年間先延ばしされるが、それまでに製品の鮮度は大幅に低下し、1年前と同じような人気や名声は期待できない」と語った。
MSの肩を持つPCメーカー
Microsoftの突然の発売延期により、年末商戦期の販売計画に大きな支障が生じたにも関わらず、PCメーカー各社は公式声明の中でMicrosoftの決定への支持を表明した。
HPは電子メールによる声明の中で次のように述べた。「MicrosoftはHPにとって最も重要かつ信頼できるパートナー企業の1社であるため、Vistaの最も適切な発売日を決定することについて、われわれはMicrosoftを支持する。われわれは今後も緊密に連携しながら、テクノロジー関連の最も優れたエクスペリエンスを共同で顧客に提供していく。そして、ホリデーシーズン後のVistaの発売を心待ちにしている」
Dellは、同社の直販型ビジネスモデルであれば、ホリデーシーズンにVista搭載機を販売することも可能であったと考えられるが、コメントはHPに比べやや控えめだった。同社は声明の中で、「われわれは販売できる体制を維持しており、(Vistaを)入手し次第、販売したいと考えている」と述べている。
GatewayはMicrosoftの決定に安堵したようだ。同社の広報担当者は声明の中で次のように述べている。「(発売延期により)ホリデーシーズンに向けて、よりしっかりとした準備ができる。実際のタイミングは分からないが、Vistaの発売日のかなり前に、われわれのPCをVistaを完全に搭載できる状態にしておく」
チップメーカーのIntelはVistaの発売延期についてコメントを避けた。Advanced Micro Devices(AMD)にもコメントを求めたが、同社はまだ声明の準備をしていなかった。
「今回の発売延期はMicrosoftにとって大きな失敗だった」と、市場調査会社Current Analysisの主任アナリスト、Sam Bhavnani氏は言う。「(Vistaの発売延期は)大きなマイナスの波紋を呼んでおり、その波紋は今後PC業界全体に波及するだろう」(Bhavnani氏)
Doherty氏によると、今回の発売延期により、小売店が次にVista搭載PCの販売促進を行うのは、ホリデーシーズンのおよそ半年後にあたる新学期商戦の時期になるという。「これで、最初に出荷されるWindows Vistaは2007年の春と夏に教育市場向けとして販売されることが確実になった」(同氏)
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