米国政府には、昔から中国に関して政治とビジネスを一緒くたにする傾向があり、中国で事業を展開する米国企業は、そのせいでしばしば競争上不利な立場に追いやられてきた。中国政府のウェブ検閲と米国企業の協力をめぐって、現在巻き起こっている騒動も決して例外ではない。
米下院国際関係委員会は15日(米国時間)、「中国におけるインターネット:自由を得るための手段か、あるいは抑圧のための道具か("The Internet in China: A Tool for Freedom or Suppression?")」というテーマの会議を開催した。
米国のインターネット企業は、自分たちがいつの間にか、自由貿易を支持する人々と、人権や報道の自由に関するこれまでの中国の姿勢を批判する人々の論争の中心にいることに気付いた。
これらの議論から何らかの建設的結論が導き出されるとは期待しづらい。米国のインターネット企業は、政府へのロビー活動により多くの資金を投じることになるだろう。そして、中国政府はこの議論を、中国の政策に圧力をかけようとする米政府の新たな試みとみなすだろう。
中国は(米国にとって)脅威であると同時に、ビジネスチャンスでもある。中国経済は向こう40年以内に米国経済を上回る規模にまで成長する。このことは米国にとってどのような意味を持つか。米国は中国に雇用や市場シェア、軍事的優位を奪われるのか。あるいは、中国が急成長を遂げるプロセスの一部として繁栄するのか。一つ確実なことは、中国共産党が今後も支配的地位に留まるつもりであり、米国政府が貿易やテクノロジーを利用して同党の地位の弱体化を図ろうとすれば、米政府は中国共産党から不信の目で見られる、ということだ。
中国で事業展開している米ネット企業の共同創業者として、私は、中国共産党の指導者たちと米国政府との駆け引きが、私の事業に多大な影響をもたらすと考えている。しかし、米国政府は向こう40年間のあいだに、中国政府と協力する上で取る外交的アプローチを改善する必要がある。ビジネスと政治の混同は、ビジネスだけでなく国際関係にも悪影響を及ぼす。中国政府は今後、米国政府は貿易やビジネスに関する政策をその時の米中関係の状態と結び付ける信頼の置けない相手だ、との見方を強めていくだろう。
私は、われわれが正しい方向に向かっていると確信している。中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した今となっては、もはや米国議会も中国との自由貿易政策を毎年再検討することはない。米国政府が、中国へのハイテク技術の輸出規制について一貫したアプローチを維持できれば素晴らしいことだ。
現在、米政府とフランス政府との間で多少の見解の相違が生じているが、だからといって米下院がフランス製ワインの輸入禁止を決定するとの懸念は持っていない。同様に、中国についても、いつの日か中国に関する下院委員会の別の会議が開催されるのではないか、と懸念する必要が生じないことを願っている。
中国も他の重要な国々と同様に扱おうではないか。
著者紹介
Harry Tsao
Mezi Mediaの共同創業者。同社は価格比較サイト「Smarter.com」を米、中、日本で運営している。
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