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中国のウェブ検閲をめぐる米議会の「二枚舌」

文:Declan McCullagh(CNET News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年02月20日 14時31分
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 われわれが選出した米国議会の議員たちが、言論の自由といった民主主義の理想の実現に全精力を傾けているなどと殊更に強調するようになったら、たいていは眉唾ものだと思ったほうが賢明である。

 今回の件も例外ではない。Congressional Human Rights Caucusは先ごろ、米国のインターネット関連企業が中国政府の命令に服従してしまっている現状について報告を行った。House International Relations分科会も15日に同じような会議を開いた。

 「『邪悪に身を落とすな』というモットーを掲げているGoogleが、利益のためだけに中国政府のウェブ検閲に協力することで、まさに邪悪を具現化してしまったことには驚いている」と、同分科会の委員長を務めるChris Smith議員(ニュージャージー州選出、共和党)は語った。「多くの中国人が真実を語ったがために投獄され拷問に苦しんでいる。そして、Googleは彼らを迫害した側に肩入れしている」(Smith)

 Smith議員やその仲間のTom Lantos議員(カリフォルニア州選出、民主党)が、心から言論の自由を賛歌する気持ちでこうした批判を行っているのなら、民主主義の原理を貫こうとする彼らの行為に拍手を贈るところだろう。

 しかし、彼らが行っていることは二枚舌もいいところである。Smith、Lantosの両議員は、抗議行動する権利に真っ向から反する「国旗消却を違憲行為とする補正箇条(Flag Burning Amendment)」に賛同している。また、コンピュータで作成された未成年者のヌード画像を犯罪とする法律、およびブロガーの間で物議を醸している「McCain-Feingold法」の選挙関連演説を制限する条項、さらには、連邦判事が合衆国憲法補正第一条の言論の自由に反するという判断を下しているにもかかわらず、「Patriot Act(愛国者法)」にも賛成票を投じている。Smith議員は、18才以下の者に対して暴力的な内容のビデオゲームの販売を禁止する提案書にも賛成している。

 両議員がこれまで一連の投票を通じて示してきた態度と、中国のウェブ検閲を批判する今回の声明を照らし合わせてみると、彼らは、中国人の言論の自由を侵す行為は大いに批判するが、米国人の言論の自由は侵されてもかまわないと考えているという居心地の悪い結論に到達する。

 あるいは、この問題について、次のような説明も考えられる。つまり、実はこれらの議員たちの行動は単に反中感情を煽ることが目的で、インターネット検閲はそのための絶好のネタとして利用されたに過ぎないのだ、と。

 「彼らの行動は単なる反中感情に過ぎない」とアラバマ州オーバーンにあるLudwig von Mises Institute所長のLew Rockwellは言う。「Smith議員や、同議員が参加しているキリスト教右派のネオコン(新保守主義者)たちは、9.11同時多発テロ以前に中国に対する冷戦を起こす計画を立てていた。9.11でその計画を延期しただけだ」(Rockwell)

 自由市場と平和を支援する団体に属しているRockwellは、さらに次のように付け加えた。「議会は、中国と事を構え、右派勢力を拡大し、結果として自由主義の原理を侵す行為を容認しているように思える」

 議会に反中感情が広がっていることは、1年ほど前のコラムでも書いた。

 Lantos 議員には次のような愚かな行為に走った経歴もある。「Village Voice」と 「Wikipedia」で詳細に記述されているとおり、Lantos議員のCongressional Human Rights Caucusは「Nayirah」という名の15才のクウェート人少女を証人として喚問し、「クウェートのイラク人兵士が保育器をつかみ取り、赤ん坊を冷たい床の上で死なせた」という証言をさせた。この証言は嘘だった。Nayirahは、実は駐米クウェート大使の娘で、彼女のマスコミへの登場はPR会社の手でお膳立てされたものだった。しかし、彼女の証言はGeorge H. W. Bush大統領によって引用され、1991年のイラク戦争推進の口実として利用された。

 もちろん、「中国共産党のリーダーたちは叱責されるべきではない」などというつもりは毛頭ない。中国人民が読む権利を持つウェブページを検閲するのはひどい行為であり、叱責どころかさげすまれて当然である。

 中国市民の自由を守るべく行動を起こした政治家たちが、米国市民に与えられた同様の権利を保護することに、少しでも関心を持ってくれることを願うのみである。

著者紹介
Declan McCullagh
CNET News.comのワシントンDC駐在記者。以前は数年間にわたって、Wired Newsでワシントン支局の責任者を務めていた。またThe Netly News.やTimes誌、HotWiredでも記者として働いた経験もある。

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