IBMは、DVDプレイヤー、TV、ステレオを接続するケーブルが絡み合うことのない居間を実現するチップを開発した。
IBMが開発したのは、802.15.3c規格に準拠したチップである。このチップは、高品位コンテンツなどのファイルを5〜10m程度の距離で転送する能力があると、IBMのリサーチスタッフメンバーであるBrian Gaucherは述べる。現時点でのサンプルチップでは、600Mbpsの伝送速度が実現されているという。目標としては、この速度を1.4〜1.5Gbpsまで引き上げる予定だ。
「このチップを、高品位映像転送などの消費者向けアプリケーションに採用しようと考えている。会議室程度の広さならカバーできる。壁の通過は考えていない」(Gaucher)
短距離の高速ファイル転送を可能とする無線チップは、技術業界において長い間目標となっているが、包括的な承認を得るのは難しい。Bluetoothは、標準化に何年も費やしている。同規格は、製品への組み込みが現在でこそ見られるようになったが、包括的な規格として採用されるという状態からは程遠い。また、Bluetoothは、同規格支持者らがかつて心に描いていた、インターネット接続用の無線規格となることは、実現しなかった。同様にUltra Wide Band(UWB)の標準化作業も、このところ泥沼化している。
IBMのチップは、30〜300GHz周辺の無線周波数帯を利用する。この周波数帯では、信号の電磁波長がミリメートル単位で測定されるために「ミリ波帯」と呼ばれている。現在、同周波数帯の利用は軍事関係にほとんど限定されているが、これは同周波数帯で信号を適切に伝送するための機器が、高額かつ製造が難しいことが一因となっている。
「(信号の転送が)チップで可能になるならば、消費者向けアプリケーションでの採用を考え始めることもできる」とGaucherは述べる。同氏によると、802.15.3c規格に準拠したIBMのチップは、UWBチップより高速であるという。UWBでは、デバイス間の距離が32フィート(約10m)未満であれば110Mbps、10フィート(約3m)程度であれば480Mbpsで大容量データを伝送する。また、IBMのチップは、「見通し(line-of-sight:LOS)」の問題には影響されない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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