ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化 - (page 2)

西田隆一(編集部)2006年02月08日 14時19分

 今、アメリカで起きていることをざっと言うと、Amazon、eBay、Yahoo――これはもともと日本でいう楽天やヤフーと同じようなネットの第一世代ですが、この人たちがやってきたことというのは、基本的には第一世代的な概念でずっと続いてきました。

 Googleが出てきたことによって、アメリカは、ものすごく身近なところにとんでもない怪物が生まれたから、その人たちは大変な危機感を持ったわけです。Amazonはすごく影響を受けました。Googleの登場によって自分たちはどう変わってしまうのだろうと。Yahooは一番影響を受けました。だから検索エンジンの会社を買収して4千億円以上の金を突っ込んだのです。eBayもちょっと領域は違うと言われていたけれど、やはりこのままただオークションをやっているだけでは駄目だというのでSkypeを買ったりした。そういう第二段階に入ったんですよ、列強と言われるアメリカのそれらの企業が。

 Googleが出てきて時価総額が10兆円を超えて、これだけのものになったのに、日本の列強はそれに対してどういう危機感を持っているんだろうと思いました。日本の列強というのはヤフージャパンであり、楽天でありということです。では、彼らはどうかというと、第一にアメリカの会社に比べてテクノロジーに対する関心が非常に低いわけです。これが残念だなということです。

 会社の戦略が間違っているというつもりは全然ないのですが、やはり日本のネットを引っ張っているリーダーとして、儲かっていてすべてうまくいっていると思っているかもしれないけれど、そういう方向に行ってしまうのは残念だなっていう気分ですね。それが僕の個人的な感覚です。

--私が知る限りは、日本のヤフーは実は半分はエンジニアで、楽天もそれぐらいはエンジニアがいると思うのですが、それでもやはり、梅田さんの目から見ると技術志向的な経営をしていないということでしょうか。

 技術があるかないかを言っているのではないのです。あれだけのサイトを運用して、あれだけのサービスをきちんとやって決済をやって何をやってというのは、そのバックエンドをやっている人とかそれを作っている人は、技術がないとかあるという議論はそもそも意味がないほど技術を必要としますよ。NTTドコモのインフラを作っている人たちに「技術がありますか?」と聞くことにあまり意味がないのと同じでしょう。だからヤフーや楽天、ライブドアみたいな会社に、技術があるかないかの話というのはナンセンスで、ITに絡む仕事だったら技術はあるわけです。

 ところが技術はあるのだけど、技術によって次の世代を切り開いていこうという会社かどうかになると、やはりGoogleという会社は1社だけ突然変異です。Amazon、Yahoo、eBayという会社は、今の日本のヤフー、楽天と似ていますよ。そんなに前面に技術が出てきているわけじゃない。

 もともとコンシューマー向けのネット産業というのはサービス業だから、基本的にセブン-イレブンと同じです。セブン-イレブンのバックエンドのシステムって、やっぱりすごいのです。すごいシステムがあるからああいうロジスティックができる。基本的にはそれと構造が同じなんですね。

 だから普通にネット事業を経営すると、前面にはサービスが出て、技術というのは裏方になるんです基本は。ヤフー、楽天、アメリカで言えばAmazon、eBay、Yahoo。こういう人たちは基本的にずっとそうだった。

 ところが、そうでないスキームでPhD(博士号)を山のように雇い、サーバの巨大なコンピュータを作り、というインフラを作って、これを強みにして全然ほかの人ができないサービスをしようということをGoogleはやり始めた。

 これが大変なことだとわかったのが2002年ごろで、(Amazon創業者でCEOの)ジェフ・ベゾスはそのころ「自分たちはもうテクノロジーの会社にならなければいけない」ということをどこで講演していても言っていた。それをベースにウェブサービスを始め、データベースのAPIを公開してという方向に流れていって、自分たちはただの小売業者ではなくて、eコマースにおけるテクノロジーのプラットホームの会社になりたいということを3、4年前から言い始めた。

 だからといってAmazonがテクノロジーの会社かと言えば、相変わらずそうではないと思うけれど、やはりGoogleが出てきた影響というのは、アメリカでは少なくとも列強と言うべき4社の間では、経営レベルで相当真剣にあったわけですよ。だってYahooでも、Yahoo! Search technology(YST)を作って、どんどんサーチの第一人者を雇っているじゃないですか。

 そういう感覚は日本のヤフー、楽天にはない。半分エンジニアで、自分でサービスを作ったり、コードを書いたり、バックエンドのシステムの運用をしているという話は、当然そうでしょう。そこを否定するつもりも全然ないし敬意も表するけど、そうではない部分のレイヤーでもう少し頑張ってほしいと思っているんですね。

--「こういう技術があるからどう使おうか」とか「こういう技術を考えて、それをどのように社会に融合させていくか」といったことを企業は考えるべきだといううことでしょうか。

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