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ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化 - (page 3)

西田隆一(編集部)2006年02月08日 14時19分
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 「べきだ」というか、日本ではネット産業にそういう視点がなさすぎるという気がします。

 技術という意味では、これは僕の造語なのですが、「深い技術」と「早い技術」というのがあると思っています。今のウェブの世界は「早い技術」--サービスを開発したら、いろんなものを組み合わせて、さらにそれをいち早くサービスとして立ち上げて、ユーザーをどんどん集めて改良していくんですね。「早い技術」というのが正しい言葉かどうか分からないけど、僕はそう定義しているんです。

 「深い技術」というのは、やはり1つのテーマで、例えばGoogleはページランクというアルゴリズムがベースにあって、そのページランクというアルゴリズムで全世界のウェブサイトをランクづけして、といったものです。その検索の結果をとにかく常に改良していくといったものは、そう簡単にできる技術じゃなくて「深い技術」ですよ。アルゴリズムも相当深いです。そこに数学者やらPhDやら集めてきて何かやるというのはさらに上を行っているわけです。

 そういう「深い技術」と「早い技術」がネットの世界にあって、この「深い技術」を極めようという気が、今の日本のネット産業の中に全くないのだろうなということですよね。

 利用者としては、いくら「深い技術」と言ったって、それができあがってオープンソース化されればサービスのコンポーネントとして使えばいいじゃないかというのは、正しい考え方の1つではあるのです。

 ただそうなると結構、同質の競争になってしまうわけです。だってみんな同じことができるのだから。だから違うレイヤーで、営業力とか、マーケティング力での競争になるから、その部分で勝負していくことになりますよね。だけど、アメリカではサーチでもGoogleのサーチのアルゴリズムがパーフェクトではないと思って、全く違うアルゴリズムでベンチャーができていたりするんです。

 例えば、このあいだGoogleが買収するかもしれないと噂になっていたRiyaという写真の会社が持っている技術は、写真の中の人物認定をするわけです。誰が写っている写真かを全部、自動的に認識するような技術を持っている会社があるわけです。こういう技術というのは、新しいブレイクスルーを生む可能性があるわけです。

 また、ビデオの世界でどういうビジネスモデルがあるだろうかと考えてみると、ビデオの内容を分析して、そのビデオがどんなことを言っているビデオなのかということを理解してコマーシャル映像を差し込む技術というのが考えられます。多分、こんな技術をこれから誰かが開発してきますよね。ところが、それはAdSenseのマルチメディア版になるわけですよね。

 その時にGoogleはそういうものを中でどんどん作ろうとする。Yahooはそれに対抗しなければいけないから、次々にベンチャーを見ていて買う。アメリカには、そういう深い技術をやって、列強に買ってもらいたいと思っているベンチャーがどんどん出てくるんです。そういうところで新しい技術をレバレッジしたビジネスモデルみたいなものがこれから生まれてくる可能性はあると思います。

 日本で、「そういうことができる人がどこにいるんですか」と言うと、やはりまだ大企業の中にいるんですよ。大企業の研究所の中にいたり、あるいは研究所ではなくても、大企業の中で最も難しいシステムインテグレーションの仕事をやっていたり。日本ではそういうところにそういう人材がいて、そういう人たちは容易にネットのほうに来ない。

 ヤフーも楽天も研究所を作って、そういうアルゴリズムの開発をするとか、NTTからごそっと人を採るということに全然興味がない。それをやるのはリスクが高いのですが、次の時代を切り開くようなビジネスモデルになるのではないかと思います。

--おっしゃっている技術志向の経営は、実を言うと日本から少しずつ消え去っていっているのではないかという気がします。

 技術志向の経営が消え去っているかというと、そうではなくて、その方向がこの何年間かハードウェアの方向に回帰しているんですよね。例えばキヤノンの御手洗(冨士夫)さんが経団連の会長になるというのが1つの象徴だし、トヨタが世界でトップの自動車会社になるといったことです。

 「日本の強みってどこ?」って言った時に、「やはり『ものづくり』だよな」というところへ日本中がこの数年でぐっとシフトした。いろんな要因が絡まっているけれども、その1つは、やはり中国の問題があって、日本の製造業はどうサバイバルするかと必死で考えた。その結果の1つとして、ものづくりにおける絶対的優位を日本の製造業は確立しなければならないという命題があって、そこに優秀な人材を入れなくてはいけないというのがありましたね。「絶対に」というものがあった。

--ソフトウェアや情報産業に対して、お金を生み出すかわからないものに投資をするのは、今の日本ではやりづらいのではないでしょうか。

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