--PCサイトの検索サービスのような形式にしなかったのはなぜですか。
西村氏:リストアップされたURLを1件1件クリックするのは、携帯電話では不便です。また、携帯電話にはPCとは違う機能があるので、それを生かしたいという思いがありました。今までの携帯電話向けサイトはPCの焼き直しばかりで、携帯電話の機能が生かされていなかったのがもったいないですね。
それから、携帯電話はそれぞれの端末が固有のIDを持っていて、このIDを元にどのユーザーがどのサイトを閲覧したかというのがわかるので、実はすべてのユーザーがログインしている状態と一緒なんです。しかもPCメールの場合はメールアドレスを詐称できますが、携帯電話の場合、送信相手に返信が届くという保証を携帯電話会社がやってくれています。ニワンゴはその安定したインフラの上で成り立つサービスで、PCメールでは成り立たちません。
ウェブの検索エンジンに、例えば「インド」というキーワードを入力した場合、インド大使館が必ず検索結果に表示されるというように、結果がある程度決まっていますよね。でもニワンゴの場合は、時間帯やユーザーによって返答する内容が変わるなど、機械が必ず同じ情報を返すというのとは違うものを作ろうとしています。ユーザーが人間っぽさを感じてくれるような検索サービスを目指しています。
--ユーザーに合わせて検索結果を返信するというパーソナライズ化はどのようにして実現するのですか。
杉本氏:ユーザーが関心のあるジャンルを登録するのではなく、サービスを使い込んでいくうちにニワンゴがユーザーの好みを把握して、ふさわしい情報を提供するというイメージです。
日々ニワンゴサービスを使ってもらえれば、ユーザーのプロファイルというのはある程度確定しやすいものなんです。例えばある人の食の好みというのは、3食全部のデータがなくても、ランチのデータが一定期間あれば、大体わかってきます。しかも、こちらからのリコメンドが毎回完璧に合っていなくても、8割程度合っていれば「よく合っている」って思うものなんですよ。占いと同じ原理ですね。
西村氏:そういう人間のあいまい性を利用するのがニワンゴの特徴でもあります。機械的な検索は正確性ばかりがサービスの良し悪しとして判断されてしまいますが、ニワンゴに人間っぽさを持たせることで、そういったあいまい性も含めて楽しめるサービスにするという狙いがあります。
杉本氏:その人間っぽさが我々にとっては絞り込み検索しやすく、ユーザーにはあまりストレスを与えない演出になっています。検索エンジンって、結果の絞り込みがユーザーの意図から外れることが多いですよね。そうなると、それ以降ニワンゴにメールは出さないということになってしまうと思うんですけれど、対話形式で情報を絞り込んでいけば、最終的には「あなたの欲しい情報はこうでしょ?」と提案する感じで、納得してもらえると思うんです。だからサービスとしては十分成立します。
--当初はキーワードを使って検索するということですが、将来的には「明日の東京の天気は?」といったような自然文検索も可能になるのでしょうか。
西村氏:近い将来と言っておきましょう。技術的には既に可能です。基本的にきれいな標準語の文章には対応できますが、方言やギャル文字などの特別な言葉にどう対応するかというのが課題です。また、100万人が利用するような状況になったときに、安定して運用できるかというところが、まだ微妙ですね。
--モバイル検索サービスはグーグルやヤフーを初めとして多くのポータルサイトが力を入れている分野ですが、ウェブ検索ほどの盛り上がりはありません。
西村氏:携帯電話向けサイトの場合、個々のサイトが独立していて、サイト同士がリンクを張り合うことも少ないので、そもそもサイトのクロール自体が難しいんです。サイトの母数が少ないので、ユーザーが検索しても期待した結果が得られる確率がまだ低い。しかも回線速度が遅く、ディスプレイも小さい携帯電話で検索結果を1件1件ユーザーが確認するのは大きな負担になります。それよりも、「これが答えです」と提示してあげたほうがいいとニワンゴでは考えています。
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