インドとオープンソース--政府が比較的中立的な態度をとる理由とは

Ingrid Marson (Special to CNET News.com)2005年11月25日 10時00分

 インドにおける大規模なオープンソースソフトウェア導入の大半は州政府が主導しているが、中央政府もそうしたソフトウェアを利用してきている。だが、Asian Media Information and Communication CentreのリサーチディレクターMadanmohan Raoによれば、インド政府はまだ「多くのMicrosoft製品」を使い続けているという。

 インドで3番目に大きなマハラシュトラ州の政府は、「数千台のデスクトップ」で「OpenOffice.org」を採用し、資金管理および用地記録管理にLinuxを利用していることが、最近のTimes of India紙の記事で報じられた。

 また、ケララ州政府のAjay Kumar長官はあるカンファレンスの講演で、同州政府では、電子政府関連の取り組みにおいて「多数の」オープンソースソフトウェアを用いていると述べた。カンヌール地方の40校を含め、同州全域の学校でも、PCにオープンソースソフトウェアを搭載している。

 Linux企業MandrivaのCEOであるFrancois Bancilhonは、同社とインド政府機関は現在話し合いの最中だが、将来的に1万〜10万台のマシンにLinuxを導入することが見込まれると述べた。

 インド政府と大部分の州政府は、オープンソースに関して中立的な立場を取っている。オープンソースを正式に推進する州は少ないが、ケララはそうした州の1つだ。

 ケララ州政府は、「プロプライエタリソフトウェアを補完/補助するオープンソース/フリーソフトウェアをうまく利用して、当該のアプリケーションが短期〜中期の間にもたらす価値を損なうことなく、ITアプリケーション/ソリューションのTCO(Total Cost of Ownership)を削減したい」と、IT政策文書に記している。

 インド政府は、オープンソースの利用を促進/研究する多くの取り組みに、資金供与を行ってきた。例えば、オープンソースソフトウェアそのものや、そうしたソフトウェア向けの訓練プログラムを開発する「Open Source Software Resource Center」の設立に貢献したり、同政府のオープンソースソフトウェアに関する経験を共有するためのウェブサイトを構築したりしている。

 インドのAPJ Abdul Kalam大統領は、ことあるごとにオープンソースソフトウェアの利用を後押ししてきた。2004年には、サイバーセキュリティに対する脅威を回避するためのオープンソースソフトウェアを用いるよう軍部に指示し、またその前年には、MicrosoftのWindowsなどのプロプライエタリソフトウェアがインド国内で人気が高いことを「残念に思う」と発言して、オープンソースの普及を望むとした。

 GartnerのアナリストAndrea DiMaioは、インド政府がオープンソースに比較的中立的な態度を取る背景には、米国企業の機嫌を損ねたくないという思惑があると指摘する。

 「インド政府は、米国のクライアントを怒らせたくないと考えている」と、DiMaioは言う。技術アウトソーシング産業はインド経済の要であり、同国のITサービス企業トップ20社が2003年から2004年にかけて輸出で稼ぎ出した総額は、実に57億7000万ドルに達しているのだ。

 Raoは、インド政府のオープンソースに対する態度は、Microsoftの「非常に強力な」ロビー活動に影響されていると話している。またMicrosoftは、インドの多数のアウトソーシング企業とパートナーシップを結んできた。例えばInfosysとは、サービスのポートフォリオを拡充するのに800万ドルを共同投資している。

 だが一方で、MandrivaのBancilhonは、インド政府が中立的だという考えには同意していない。「インド政府は、コストを削減し自主性を獲得できるという理由から、オープンソースを促進する強い意志を持っている。インドは優れたソフトウェア専門知識を有しており、ソフト業界の顧客ではなく提供者となることで、みずからの技術をコントロールする力を手に入れたいと望んでいる」(Bancilhon)

 インドの公共機関は、同国がスキルの高い技術スタッフを抱えていることから、新興市場のほかのどの国よりもオープンソースを容易に採用できると、Raoは述べている。

 「インドは優秀なITの人材の宝庫だ。オープンソースの導入を試みてきた他の国々は、秀でた才能と高度な技術を持ち得なかったが、インドには傑出したIT専門家が多数存在しているのだ」(Rao)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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