アドビCEOが語る「マイクロソフト、アップル、中国市場」

Tony Hallett(Silicon.com)2005年11月24日 13時38分
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 Adobe Systemsが34億ドルでMacromediaの買収を決定したことは、ソフトウェア業界の今年の重大ニュースの1つだろう。

 米国に続き、欧州でも承認間近と見られるこの買収計画について、英Silicon.comのエディターTony HallettがAdobeのCEO、Bruce Chizenに話を聞いた。

 Adobeが先ごろ発表した「四半期中間業況」によれば、同社の業績はふたたびアナリストの予想を上回るものとなりそうだ。Macromediaとの合併計画にもほぼゴーサインが出た今、Adobeの経営陣は前途洋々の気分でいるに違いない。Adobeは20年以上の歴史を持つ、数少ない独立系ソフトウェア企業でもある。

 もっとも、懸念材料が皆無というわけではない。MicrosoftはAdobeの市場に徐々に照準を合わせつつあり、オープンソースコミュニティからはAdobe製品と競合するようなソフトウェアが登場し、中国は機会と同じくらいの問題を突きつけている。しかし、Adobe CEOのBruce Chizenはこれまでと同じように、未来に関して確固たる考えを持っているようだ。

--Adobeはこれまでの市場を捨てようとしている、と見る人もいます。

 情報を効果的に表現するためのツールを提供するという点では、何も変わっていません。

--Adobeが市場競争を生き抜くことができたのはなぜでしょうか。

 Microsoftが幅広いユーザーの要求に応えているのに対し、当社は専門家の要求に応えています。具体的には、ITの専門家やクリエイター、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナーなどです。この種の人々は情報のアウトプットの質にこだわります。「そこそこ」は許されません。当社の事業が順調に成長してきたのは、この市場に的を絞ってきたからです。

--今後も、専門家市場に特化していくのですか。

 情報爆発の時代ですから、状況は変わると思います。

--DRMを含め、著作権管理全般に注目が集まっています。文書の「デジタル漏洩」対策はそのひとつです。Adobeにとって、これは大きな商機となりますか。

 著作権管理にはB2B(企業間取引)型とB2C(消費者向けサービス)型があります。もっとも、著作権管理には特許がからむことが多く、非常に厄介なので、なるべく距離を置くようにしています。当社が力を入れているのは文書のセキュリティです。規制機関や業界とも連携しています。文書のセキュリティはPDFが提供する重要な価値のひとつです。

--具体例を挙げて説明してください。

 たとえば、製薬会社では、医薬品に関する新事実や薬害に関する情報が入った場合に、Policy Serverのポリシーを変更するだけで、医師が(古い情報に)アクセスすることをただちに禁止することができます。

--中国市場をどう見ますか。

 中国の話をすると、いつも面倒が起きるので困ります! 私の発言が中国政府の癇に障るのでしょう。中国市場におけるAdobe製品のシェアは日本とほぼ同じ--つまり、100%近くに達していますが、日本市場での年間売上高がおよそ3億ドルと見込まれるのに対して、中国市場は300- 500万ドルにすぎません。これは問題です。

--それでも、中国にこだわるのですか。

 成長率の点からいえば、中国は世界最大のIT市場です。当社は米国政府と共に中国政府を啓蒙し、あるいは働きかけることによって、中国が生み出している問題を中国政府が理解できるよう支援しています。7月中旬には米国通商代表部と、私の記憶が正しければ国務省、そして中国政府の間で会議が開かれました。この会議は中国政府に知財対策の強化を約束させるなど、大きな成果を上げました。

 第2の措置としては、ビジネスモデルの変革があります。具体的には、パッケージソフトウェアからホステッドアプリケーション、サーバベースのソリューションへの移行です。パッケージソフトウェアの価格を下げることも一案ですが、中国での販売価格を世界最低水準まで引き下げたときも、状況は改善されませんでした。

 最終的には、国内外での事業展開を目指す中国の商用ソフトウェア企業が、内側から、中国政府に圧力をかける必要があると思います。しかし、それは何年も先の話でしょう。

--今後も、中国での違法コピー問題に取り組んでいく予定ですか。

 そのつもりです。中国の知財教育や著作権保護に費やしている金額を、英国、ドイツ、あるいは米国に投じていれば、はるかに多くの利益を上げることができたでしょう。

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