スクウェア・エニックスの2006年3月期中間決算(4〜9月期)業績は、売上高は270億9100万円と前年同期とほぼ横ばいとなったが、ゲーム事業の営業利益が8億4200万円のマイナスになったことをはじめとして、その他事業を除くすべての事業で営業利益が前年同期比を下回ったことから、営業利益は24億8400万円となり、当期純利益は前年同期比30%減の22億200万円となった。
事業別では、ゲーム事業は営業利益で赤字になった原因について、マーケットが非常に厳しくなったこと、次世代プラットフォームの世代交代に加え、モバイルやPCなどの代替サービスが増加したことによる影響で価格の下落や本数の減少が起こっていることを挙げた。ただし、下期には「キングダムハーツ2」「ファイナルファンタジー12」などの大型タイトルの発売が集中していることや、北米での「ドラゴンクエスト8」の発売もあるため、売り上げに貢献すると見られる。
オンラインゲーム事業では主力コンテンツ「ファイナルファンタジー11」の会員数に変化はないが、下期はXbox360に参入することでプラットフォームが増えるため、ユーザー数の増加を見込んでいる。
モバイル・コンテンツ事業は、成長基調にあるものの、海外がスムーズに立ち上がっていないことが課題となっている。下期以降はモバイルに強いタイトーと一緒に海外展開をすることで、状況の改善を図る。
出版事業では攻略本の売り上げ減に加え、効果で昨年業績を牽引したコミック「鋼の錬金術師」の勢いが落ちたこともあり、売上高・営業利益ともに減少した要因となった。
その他事業では映像ソフト「ファイナルファンタジー7 アドベントチルドレン」がDVDとUMDによる販売で70万枚以上と好調な売り上げとなったことにより、営業利益が13億3000万円となり、業績に大幅に貢献した。
一方、9月28日にスクウェア・エニックスの連結子会社となったタイトーは、売上高414億8600万円、営業利益9億500万円と、共に前年同期の業績を下回ったことに加え、保有資産などの見直しにより46億3200万円の特別損失を計上したため、33億8300万円の赤字となった。
タイトーとの持株会社化に関する戦略について、スクウェア・エニックスの和田洋一社長は「現状各セグメントごとに詰めているところ」とし、事業モデルやセグメントごとの目標数値などの言及は避けた。
和田社長は、今後ユーザーが端末や通信環境に依存しなくなり、「web2.0ではないが、ネットワーク社会になるとユーザー自身が供給側に成り代わってしまう」という認識を強調。コンテンツからサービス産業にシフトしていく必要があるとし、ユーザーが作った帰属意識の高いコミュニティをいかにサポートして収益化するかということで事業の骨格を考えていくと明言した。「なんでゲームと全然関係ないところが関係会社になっちゃうんだろう、ということが今から起きると思う」と述べ、今後ゲーム業界以外の企業との提携があることも示唆した。
今後スクウェア・エニックスとタイトーは持株会社に移行するが、具体的なビジョンは明らかにはしていない。ただし、それぞれを単純につなげるのではなく、「新しいセグメントで整理しながら機動的に事業再編ができるようにしたい」と和田社長は方向性を述べた。
2010年3月期に向けた中期目標は、営業利益500億円(今期見込み290億円)、営業利益率25%(今期見込み21%)とした。スクウェア・エニックスの連結営業利益率は24%あることから、目標達成には今後連結対象となるタイトーの営業利益率向上が不可欠であり、赤字事業の大幅な改善・整理が鍵になると見られる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス