Warner Bros. Entertainment、ワーナー エンターテイメント ジャパン、NTT(持ち株会社)、NTT西日本、東宝の5社は10月11日、共同で記者会見した。デジタル化された映画コンテンツ「デジタルシネマ」を配給するために、サービスモデルを確立したり、技術検証したりすることを目的とした共同トライアルを開始する。
トライアルの名称は「4K Pure Cinema」で、約1年間実施する。上映作品の第1弾は、10月22日公開のティム・バートン監督「コープス・ブライド」、第2弾は11月19日に先行上映され、同26日に公開されるマイク・ニューウェル監督の「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」となる。デジタルシネマの配信対象となる劇場は、「VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ」「シネマ メディアージュ」「TOHOシネマズ高槻」の3劇場だ。
現在の映画業界においては、フィルムを用いて映画を上映する「アナログシネマ」の占める割合が約9割だという。これを、デジタル化された映画コンテンツをネットワーク経由で配信して上映するデジタルシネマに移行させるべく、ハリウッドのメジャー映画制作スタジオでは2002年に業界団体Digital Cinema Initiative(DCI)を設立、デジタルシネマの映写および配給に関する技術仕様の策定にあたっていた。2005年7月に「DCI仕様」と呼ばれるデジタルシネマの技術仕様が発表されたことで、今回Warner Bros.をはじめとする5社が共同でDCI仕様に準拠したデジタルシネマの実証実験を開始することとなった。
「4Kの画質はすばらしい」と力説するWarner Bros.のハメル氏 |
DCI仕様では、解像度が4096×2160画素、800万画素クラスの4K規格と、その4分の1となる2048×1080画素、200万画素クラスの2K規格がある。2K規格はすでに仕様が策定される以前の2005年前半より国内約約10カ所にてトライアルが実施されていたが、今回のトライアルは「4K Pure Cinema」という実験名称が示すとおり、4K規格での実験となる。4K規格での実験は「世界初」(Warner Bros.Entertainmentシニアバイスプレジデント ロブ・ハメル氏)だという。
共同トライアルでは、米国のコンテンツ送出センターと日本国内の配給センターや劇場を結ぶ光ファイバーネットワーク、暗号化システム、鍵管理システム、不正操作防止システム、セキュリティ管理など、DCI仕様デジタルシネマの配信や上映設備が検証されると共に、映像品質や運用体制、劇場運営コストなどのビジネス面も検証対象とする。
各社の役割としては、まずWarner Bros. Entertainmentおよびワーナー エンターテイメント ジャパンが、コンテンツを米国から日本に送るための送出センターの構築や運用管理を担当する。NTTは、日米および国内配信センター間の光ファイバ網や、DCI仕様に準拠した配信システムを提供する。同じくNTT西日本は、西日本エリアにおける光ファイバ網を提供すると共に、デジタルシネマ用劇場機器制御装置を開発、提供する。東宝は、上映劇場を提供し、劇場興行運営や上映システムを管理する。
東宝 取締役 映像本部 映画興行担当の村上主税氏は、デジタルシネマのメリットとして、「上映回数が増えても画質の劣化が皆無で、鮮明な画像がいつまでも楽しめる。また、1本のファイル転送で複数スクリーンでの上映が可能となり、字幕版と日本語吹き替え版の切り替えが簡単にできる。さらに、映写機のスペースやオペレーションが不要となり、効率向上も望める」としている。
4K規格でのトライアル実施にあたってWarner Bros.のハメル氏は、「2Kで十分だという配給会社もあるが、それは1万画素のデジタルカメラが出た頃にこれで十分だと思われていたのと同じだ。4Kの画質の良さは一目りょう然だ。映像を実際に見て、違いを実感してほしい。Warner Bros.では将来的にはすべての映画を4Kで作っていきたい」としている。
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