--技術が指数関数的に成長するなら、ウィルスの数と破壊力も、指数関数的に伸びると考えるべきではありませんか。人間の脳内でソフトウェアが走る時代に、ウィルスはどのような役割を果たすのでしょうか。
技術の創造的側面と破壊的側面は同時に発展していきます。「問題が多すぎるから、インターネットは閉鎖してしまおう」という人はいません。ソフトウェアウィルスは確かに迷惑な存在ですが、だからといって、インターネットをなかったものにするわけにはいきません。ソフトウェアが生活に占める割合が増えるにつれて、ソフトウェアウィルスの脅威も大きくなっていくでしょう。
--数十年後には、プライバシーに関してどのような権利が認められているべきだと思いますか。あるいは、どのような権利が認められていると思いますか。
現代の人々は、非対称戦争とテロリストに対する不安を抱えています。現代では、少人数のグループでも、(国際的な大惨事を)引き起こすことができます。このような事態を避けるためには、知性を利用して、プライバシーの面で多少の譲歩をする必要があります。バランスが必要です。何事も簡単にはいきません。
--富裕層だけが知性を増幅し、それ以外の人はそのままということになれば、社会的格差がさらに広がるのではありませんか。人口の20%に同じ機会が提供されるまでは、何人たりとも150年以上生きてはならないといった法律が議会で成立するかもしれません。
富裕層のみが利用できる間はうまくいかないでしょうが、単に「価格が高い」というレベルになれば、ある程度うまくいくはずです。携帯電話のように、誰もが利用できるようになれば(完璧です)。
--一部の人だけが高みに上り、その他大勢は置いてけぼりにされても、政治的な問題はないと考えておられるのですか。
深刻な孤立は起きないということです。このプロセスは徐々に進み、やがては携帯電話のように、広く普及します。携帯電話はあっという間に普及しました。
--世界人口の90%が能力を増幅し、知的にも肉体的にも優れるようになったら、残りの人々はどうなるのでしょうか。ペットとして飼われるのでしょうか。
技術を取り入れる程度が違うということです。技術を完全に拒否する人はまれです。電話をまったく使わない人がどのくらいいるでしょうか。そのような人は、人里離れた場所に住んでいるのです。技術は物質的な豊かさをもたらします。そのようなものを使わない手はありません。いずれにしても、技術の恩恵は技術を使わないごく少数の人たちにももたらされることになるでしょう。
--しかし、これは携帯電話を持たないこととは話が違います。一部の人間が、その他の人間より何十億倍も賢くなったら、どうなるのでしょうか。
それが社会不安を引き起こすかというと、そんなことはないと思います。この技術を利用できるのが永遠にエリートだけということになれば、社会不安につながる可能性はあります。しかし、技術は急速に発展しています。価格が1年間で50%下がり、それと同時に質も高まっていけば、この技術を利用できる人は増えていくでしょう。
私は幹細胞研究を支持する立場を取っていますが、幹細胞研究に関する現在の限界--さまざまな論議や制限も、進化の大河の中では小石にすぎません。大河の流れをせきとめることはできないのです。
--これまでの歴史を振り返ると、人類には未来を予測する力があまりないようです。空飛ぶ車はどうなったのでしょうか。
私の予測や(利益加速の)法則を議論するのに、他人の外れた予測を例に出すのは不公平ですし、不適切だと思います。私は20年以上にわたり、これらのモデルを利用して、かなり正確な予測を行ってきました。未来派の人々の多くは、進化の指数関数的な特徴を分析するために必要なモデルを持っていないのです。
--あなたは著作の中で、人間の10の20乗倍のIQを持ったコンピュータが登場したら、そのコンピュータに経済を運営させるべきだと述べています。これは中央指令型経済を、さらに悪い形で復活させることになりませんか。
それは誤解です。私が書きたかったのは、われわれはこの技術から学ぶことになる、ということです。人類はすでにマシンと協同しています。今やどんな専門家も、コンピュータなしで仕事をすることはできません。われわれの知性は文字通り、拡大することになるでしょう。しかしそれは、中央集中コンピュータにすべてを委ねることとは違うのです。
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