レイ・カーツワイルが描く「素晴らしき新世界」 - (page 2)

Declan McCullagh(CNET News.com)2005年10月07日 16時10分

--あなたが考える未来は、基本的には「Strong AI(強い人工知能)」を前提にしているようです。Strong AIとは、人口知能が意識を持ち、いずれは人間を超える知性を獲得するという考え方ですが、AIの研究者たちは顔認識のような具体的で現実的な応用の実現をあきらめてしまったようです。今週、私はコンピュータサイエンスの専門家であるRudy Rucker教授の講演を聞きましたが、彼はStrong AIは死んだといっていました。

 数年前には人間レベルの知能を必要としたプロジェクトが、現在はAIによって実行されています。このような例は何百もあります。心臓病の診断、電子メールのルーティング、携帯電話のルーティング、飛行機の着陸などです。

 今は「Narrow AI(狭義のAI)」の時代です。これはStrong AIとは異なります。今はまだ、人間の知能のすべてをAIで実現することはできませんが、以前なら人間の知能を必要としたような役割をAIが果たしていることは確かです。クレジットカード詐欺の発見はその一つです。15年前には、これは研究プロジェクトの域を出ないものでした。

 今は2005年です。これから2029年までの間に、ハードウェアの能力は何十億倍にも拡大するでしょう。脳スキャニングの解像度は年を追う毎に倍々に増えています。これは一冊を費やさなければ描くことができなかったほど、長い物語なのです。2020年代になれば、Strong AIを実現するためのハードウェアとソフトウェアが揃うでしょう。今はまだ、その十億分の一程度しか実現されていません。

 脳モデリング、脳スキャン、そしてそれを促進するためのツールは、どれも倍々の速度で進化しています。それを考えると、2020年代にはこのプロジェクトはきわめて実現可能なものとなっているはずです。

--あなたはAIによって完璧に機能している複雑なソフトウェアの例として、飛行機の着陸システムを挙げています。しかし、これは本当に複雑なシステムなのでしょうか。無線標識を利用した初の自動着陸が行われたのは1937年のことです。1970年代には、コンコルドが標識を利用してグライドパスを飛びました。そう考えると、着陸システムはStrong AIの良い例とはいえないのでは。

 自家用機に利用されている最新のソフトウェアがどのようなものかご存じですか。これらのソフトウェアは、それを搭載している機体のみならず、空中にあるすべてのものがたどる経路を予測することができます。交渉さえできるのです(他機との衝突回避手続きのこと)。最新システムの性能には目を見張るものがあります。

--ご自分の寿命を延ばすために、どのようなことをされていますか。

 私の著作「Fantastic Voyage」には、寿命を延ばすために今できること(とその後のステップ)が書かれています。これはベビーブーム世代にも役立つはずです。後半ではナノテクノロジー革命についても書いています。

 私は今、自分の肉体の生化学を徹底的に作り替えようとしています。毎日200錠以上のサプリメントを摂取しています。このプログラムの特徴は「積極的な補完」にあります。人間の身体は、何もしなければ長く生きるようにはできていません。ですから、身体の生化学を作り替え、疾病の過程、癌の発生経路、その他のさまざまな加齢過程を新しいパターンに書き換える必要があります。私が実践しているプログラムの中身は、この本に詳しく書いてあります。

 触覚や記憶力、反応時間をもとに、(自分の生物学的年齢を)計算するテストがあります。40歳のときのテストでは、私の年齢は約38歳でした。現在は57歳ですが、テストでは約40歳という結果がでました。これらのテストを見る限り、私はあまり年を取っていないことになります。

--あなたの新刊によれば、能力を増幅させた人間は、脳内でソフトウェアプログラムを走らせるようになり、「政府当局は、これらのソフトウェアの動作を時折監視する正当なニーズを持つ」とか。ここに描かれているのは、オーウェル的な世界ではありませんか。

 今日と同じように、バランスが必要だと思います。これらの技術がどのような力をもたらすのかを、われわれは明確に理解する必要があります。生物ウィルスを生み出すことが可能になった時点で、人類はリスクを抱えることになりました。ナノテクノロジーは破壊的な目的にも利用することができます。Strong AIも同様です。私は議会で、生物ウィルスに対抗するために、第2のマンハッタン・プロジェクトを立ち上げる必要があると証言しました。このシステムはまだ存在していません。

 われわれはあらゆる側面から、非対称戦争(asymmetric warfare)と戦っていかなければなりません。(政府には)果たすべき役割があります。ソフトウェアウィルスはどんどん高度化していますが、ソフトウェアウィルスとの闘いが高い成果を上げてきたことは、安心材料といえると思います。

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