アイピーモバイル、2GHz帯の携帯電話事業で免許申請--IIJ、楽天など出資

岩本有平 (編集部)、藤本京子(編集部)2005年09月30日 13時32分

 マルチメディア総合研究所の100%子会社であるアイピーモバイルは9月30日、2HGz帯を利用したモバイルデータ通信事業に参入するため、総務省に基地局開設の免許を申請した。

 アイピーモバイルは、マルチメディア総合研究所がTD-CDMA技術を持つ米IPWirelessとパートナー契約を結び、2002年11月20日に設立された。現在の資本金は4億5000万円。国内では最も早い2003年4月に実験免許を取得し、NTTコミュニケーションズと共同で実験を進めた。

「2001年からTD-CDMA技術に注目し、約5年かけて免許の申請ができた。」と語ったアイピーモバイル代表取締役杉村五男氏

 申請が認可されれば、アイピーモバイルは2006年10月から東名阪エリアを中心に、月額2500円から5000円程度の定額制で、TD-CDMA方式による下り5.2Mbps、上り848kbpsの高速モバイル通信サービスを開始する。2007年には下り22.1Mbps、上り2.64Mbpsまで通信速度を高速化し、さらに2010年にはサービスエリアを全国に広げる予定だ。

 また、同社は10月を目途に第三者割当増資を実施する。合計7社から8億7500万円の出資を受ける予定で、これによりアイピーモバイルの資本金は13億2500万円となる。増資引受先と出資額は、IIJグループのアイアイジェイテクノロジーが5000万円、翔泳社が5000万円、楽天グループの楽天ストラテジックパートナーズが2500万円、CSKグループのCSKプリンシパルズが非公開となっており、残り3社については現時点で社名も金額も公表できないという。ただし、「米メディア大手のリバティグローバルが免許取得後に200億円以上出資する方針」という新聞報道があったことから、非公表企業のうちの1つとしてリバティが有力だろう。

 出資が決まっている企業は、CSKがバックオフィス系のシステムを含めて協力し、楽天や翔泳社がコンテンツを提供する予定で、IIJはインフラやソリューションを提供する。

 アイピーモバイルは申請が認可され次第、今年度中に資本金を70億円から80億円程度に増やす予定で、最終的には資本金を400億から600億円程度にする計画だ。アイピーモバイル代表取締役の杉村五男氏は「免許を取得することを前提としての話だ」その計画の詳細は明らかにしなかった。また、米リバティによる出資について聞かれても「ノーコメント」を繰り返した。

 同社はサービス開始後、2008年度後半からの単月黒字、2009年度の年間黒字を目指しており、2009年には約1000億円の収入を見込む。また、その時期の株式上場も検討している。ユーザー数については、2008年にモバイルカードでの通信で100万ユーザー、モデム型機器や組み込み型機器などで40万ユーザーの合計140万ユーザーを目指している。

 サービスは当面データ通信のみを提供する。アイピーモバイルで自らサービスを提供するほか、MVNO(仮想移動体サービス事業者)のビジネスモデルも検討している。MVNOサービスについて交渉中の企業はあるものの、杉村氏は「認可が下りないことには具体的な話ができない」とした。音声サービスについても「環境が整ったらサービスを実施したい」(同氏)と意欲を見せたが、時期など具体的な話は一切なかった。端末や基地局の提供については、「それぞれ国内外数社と相談中だ」と言う。基地局は最大で全国8500局程度設置する予定だ。

 今回、携帯電話事業の免許を新規に申請したのは、アイピーモバイルのほかに、周波数帯は1.7GHzと異なるもののソフトバンクのBBモバイル、イー・アクセスのイー・モバイルの3社だった。総務省は1.7GHz帯で2社、2GHz帯で1社の参入を認める方針だ。だが、申請した3社がこのまますんなりと認められるとはかぎらない。総務省は各社が提出した事業計画書を審査して、年内に免許の交付先を決める予定だ。審査では、通信サービスということで資本・財務力が焦点になる見込み。そのために、イー・アクセスとアイピーモバイルは、申請日に合わせて大幅な増資計画を発表しているわけだ。

12年ぶりに携帯電話事業の新規参入を狙う3社
帯域 1.7GHz帯 2GHz帯
新規参入 ソフトバンク イー・アクセス マルチメディア総合研究所
事業子会社 BBモバイル イー・モバイル アイピーモバイル
事業会社への出資企業 1.ソフトバンク

1.イー・アクセス

2.TBS(予定)

3.GSキャピタル・パートナーズ(ゴールドマン・サックス、予定)

1.マルチメディア総合研究所

2.アイアイジェイテクノロジー
(IIJグループ、予定)

3.CSKプリンシパルズ
(CSKグループ、予定)

4.翔泳社(予定)

5.楽天ストラテジックパートナーズ(楽天グループ、予定)

新規参入申請日 2005年9月5日 2005年9月29日 2005年9月30日
音声サービス開始 2007年末 2008年2月 現在は計画なし
データサービス開始 2007年末 2007年3月 2006年10月
設備投資額 直接投資額は数百億円* 3000億円程度 1500億円程度
*基地局など設備投資総額は数千億円とされるが、海外の機器メーカーが負担して、それをソフトバンクがリースする

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