セイコーエプソンが、9月22日の東京株式市場で朝方から大量の売り物を浴び、値つかずのまま、売り気配を切り下げる展開だった。結局、大引けでは前日比ストップ安(500円安)比例配分の3000円で引けた。これで2003年8月26日につけた上場来安値3020円を更新する事態に陥った。前日の21日に、2006年3月期の連結業績予想を大幅に減額修正したことが株価急落の直接の原因だが、果たしてこうした業績の下方修正は「エプソンだけのレアケース」として片付けてしまえるのか。全体相場の堅調が続くなかで、相変わらず物色のカヤの外に置かれているほかのIT・ハイテク株への波及は本当にないのだろうか。
株価がストップ安で上場来安値までたたき込まれたのは、21日に2006年3月期の業績について大幅な下方修正を発表したためだ。発表によれば、今3月期の連結売上高を従来予想比210億円減の1兆6180億円(前期比9%増)、営業利益を同380億円減の440億円(同51%減)、経常利益同360億円減の450億円(同47%減)、純利益同220億円減の220億円(同60%減)と、純利益ベースでは従来予想の半減となる大幅下方修正となった。
7月に続いての再度の下方修正の理由について、会社側では「プロジェクションテレビの米国市場での伸び悩み、プリンタの価格競争激化、液晶ディスプレイ、液晶ドライバなど液晶関連電子部品の価格が予想以上に低迷したこと」などを挙げている。7月に続く2回目の下方修正で、「短期間に業績予想の下方修正を繰り返すエプソンの企業体質に対して、投資家からの信頼感が大きく揺らいでいる」(市場関係者)との声も聞かれる。
その信頼の低下を表すように、9月21日付で、証券会社からの投資判断や目標株価の引き下げが相次いだ。メリルリンチ日本証券では、投資判断を従来の「中立」から「売り」に引き下げ、レポートの中で「さらにもう一度、プリンタを要因として下方修正が発表されると見ている」などとネガティブな見通しを公表している。さらに、野村証券は22日付で投資判断を「2(やや強気)」から「4(やや弱気)」へと一気に2段階格下げ、日興シティグループ証券も「2M(中立・中リスク)」から「3M(売り・中リスク、目標株価は3100円)」に引き下げるなど、アナリストからも厳しい評価が噴出した。
9月22日の東京株式市場では、このエプソンの株価ストップ安・上場来高値更新の衝撃が波及した。アドバンテストや東京エレクトロン、ソニー、キヤノン、京セラなど主力の値がさハイテク関連銘柄が軒並み下落する展開となった。
外国証券のアナリストは、「今回のエプソンのような極端な業績下方修正はレアケースだが、いわゆるデジタル家電に関連したハイテク銘柄の小幅な業績下方修正は、今後予想以上に数多く出てしまうという懸念がある。その背景となっている構造的な要因は、日本のエレクトロニクス産業全般の国際競争力低下と、最終製品価格の予想を上回る急速な下落の2点にある。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国でのPC、携帯電話などの飛躍的な需要の伸びに対して、日本の関連メーカーは価格競争力で劣勢に立たされ、ほとんどシェアを拡大できていないのが実情だ。デジタル家電の最終製品価格は年率30〜40%も下落しているケースは珍しくない。薄型テレビ製造の国内主要7社のうち、確実に黒字を確保できそうなのは上位2社に限られるという厳しい状態が続いている」としている。
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