オールアバウトがジャスダック証券取引所に9月13日に新規上場した。プロがガイドするコンテンツを核に広告事業で成長してきた同社は、2000年6月にリクルートと米国のAboutとの合弁会社リクルート・アバウト・ドットコム・ジャパンとして事業をスタートした。昨年にはAboutの株式を譲り受ける形でヤフーが資本参加して業務提携を結び、社名もオールアバウトとなった。そして、今年、設立から5年で上場を果たしたわけだが、同社のビジネスの現状と今後について代表取締役社長兼CEOの江幡哲也氏に話を伺った。
--株式公開による市場で得た資金の使い道について教えてください。どのような事業を手がけたいと考えていますか。
スピードを上げていくということです。
ご存知のとおりオールアバウトには、「ガイド」と呼ばれる専門家集団がいま340人いるのですが、これを基盤としたインターネット上の信頼できるメディアを作ってきたというのが「第1ステージ」であって、そこでは広告事業をずっとやってきました。
この広告事業も一般の他のポータルサイトとは違う形の広告事業のやり方、オールアバウトならではのやり方をやってきました。これで収益化ができて、ほぼ第1ステージを終えたというのが昨期(2005年3月期)です。
そしてこれからが「第2ステージ」と言っていて、そこには2つの大きなやるべきことがあります。1つがメディアをもっと強化したいということです。ガイドという専門家を束ねてそれに特化をしてやってきことを、より強化していかなければならないと思っています。
もう1つがビジネスの拡充です。広告ビジネスは「編集型広告」というわれわれなりのポジションができたのですが、広告事業を強化しつつ、並行して複数の事業を展開していこうと考えています。
われわれには基盤としてメディアがありますが、そこにいろんな事業を同時に展開できるというのが強みです。ヤフーの事業が広告から始まって、そのあとにオークションを開始して、ショッピングを開始して……というのと似たような構造です。
具体的には今年の5月に第一弾としてオンラインショッピング事業を始めました。さらに今年にもう1つぐらい新規の事業を立ち上げたいと考えています。この先も毎年1つか2つ程度は新規の事業を開始したいと考えています。
新規事業の展開とメディアを強化するのに、ある程度まとまったお金が必要で、それにはこの2、3年で投資額20〜30億ぐらいを見ているので、今回、その資金の調達をベースとして株式公開をしました。あとは認知度や信頼性を株式公開によって上げていこうというのも狙いとして入っています。
--広告商品が非常に特徴的ですが、編集型広告について詳しく教えてください。
非常にシンプルな話で、インターネットになって読者がどう変わるかというと賢くなるわけですよね。オールアバウトは読者から「ウラ取りメディア」なんて言われますが、読者は生活分野でいろいろな商品を検討するときにオールアバウトでその商品のウラ(背景知識や商品知識)を取って買います。そういう意味では読者は賢くなっているわけです。
「こだわり消費市場でナンバーワンの企業になる」とオールアバウト代表取締役社長兼CEOの江幡哲也氏 |
あとは、こだわりを満たす行動習性がどんどん増えていて、人とは違う自分らしい買い物、生き方をこういった情報メディアが後押ししているんですね。そうなったときに、広告主が「自分の商品のここがいいんですよ」と連呼しても、賢くなった読者はなかなか聞いてくれなくなってくるわけです。インターネットが爆発したときにそういう世の中がくるだろうなと思っていました。
商品の変化や情報環境の変化が起こったときに、企業が持っている商品のよさを伝える方法がどんなものなのかをずっと考えていて、役立つ情報に広告を変えればいいということに到達しました。その1つの形態が編集形広告だったのです。
問題は手間です。コンセプトはわかったけれど、編集型広告を1つ1つ作っていたら手間がかかり、コストに見合うのかと考えました。なので、われわれは安価なコストで回せるような生産工程を最初から取り込んで作っています。
共同パートナーである制作会社4社ぐらいとがっちり組んで、ユーザーのアクセスログや過去の広告事例の共有だとか、広告制作誌面の部品化だとか、そういうことをすべてやってきています。手間やコストを下げて品質を高くするというように、目に見えない生産工程にもこだわっています。
--御社の広告で紹介する商品は価格が高いものが多く、所得の高い人たちに向けたものが多いと感じます。
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