ソニーは9月22日、2005年度から2007年度までの中期経営計画を発表した。カンパニー制を廃止し、エレクトロニクス事業に注力することで経営の建て直しを図る。また、全世界で1万人のグループ人員を削減するなど、構造改革を推し進める。なお、一部報道にあった金融事業の売却については否定した。
ソニー代表執行役会長 兼 CEOのハワード・ストリンガー氏は会見の冒頭で、「顧客にとってソニーが唯一の選択肢であるわけではないことを自覚する必要がある」と危機感をあらわにした。また、代表取締役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏はこれまでのエレクトロニクス事業の業績不振の原因として、商品開発における顧客視点の欠如、技術力の低下、オペレーション力の低下の3点を挙げた。特にオペレーションについては、「カンパニー制とEVA(経済的付加価値)を経営指標としたことで、短期的な利益を追求し部分最適を図るようになってしまった」と指摘。組織間の壁を取り払うことが緊急課題だとした。
ハワード・ストリンガー会長(中央)ら経営幹部は、9月8日に発表したウォークマンを片手にエレクトロニクス事業の復活を誓った |
2007年度に連結売上高を8兆円以上、連結営業利益率を5%とすることを目標とする。なかでも2003年度、2004年度と赤字が続くエレクトロニクス事業は、2007年度に営業利益率を4%にまで高める方針だ。
まず、エレクトロニクス事業の絞り込みと人員削減により、2007年度末までに2000億円のコストを削減する。具体的には不採算もしくは成長が見込めない15のビジネスカテゴリーを抽出し、事業を縮小または売却する。どのカテゴリーを対象とするかについては「ビジネス上の観点から公表できない」(中鉢氏)としたものの、高級家電群の「QUALIA(クオリア)」ブランドについては、新規開発を凍結することを明らかにした。また、ロボット事業についても研究開発を縮小するとした。
このほか、2007年度末までに製品モデル数を2005年度比で20%削減し、ブラウン管の製造設備を含めて製造拠点数を11拠点減らす。グループ人員については、国内で4000人、海外で6000人を削減する。なお、ソニーは2003年にも2万人のグループ人員を削減したばかり(関連記事)。このときは間接部門の人員が中心だったが、今回のリストラは本社の人員も対象となっている。
これらの構造改革にかかる費用は2005年度から2007年度までの2年間で2100億円となる。一方、この構造改革で得られる効果は2007年度末までで1230億円と予想しており、改革のメリットが生まれるのは2008年以降になるものと見られる。
組織の体制については、現行のカンパニー制を廃止し、製品分野別の事業本部を新たに設ける(図1)。それぞれの事業本部のトップに執行役を据え、責任を明確化する。また、商品戦略や資材調達、生産、販売など部門を超えて統括するようにすることで、事業の効率化とスピードアップを図る。
なお、構造改革費用がかさむことから、2005年度の連結業績予想は下方修正している。売上高は前年同期比1.2%増の7兆2500億円と前回予想から変わらないものの、営業損益は7月の予想値から500億円減額して200億円の赤字に転落する見込み。また、純損益も同200億円減額して100億円の赤字となる。
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