冬の路面上の氷を溶かすために散布される凍結防止塩。その塩分が、水質を汚染している可能性があることが明らかになった。
ノースカロライナ大学地質学教授であるLawrence Bandをはじめとする調査グループは、3つの地域における水源の化学的性質データを数年間調査した結果、路面への凍結防止塩の散布と市街地の開発により、調査地域の河川や湖、井戸水の塩分濃度が上昇していることが判明した。
調査された3つの地域(メリーランド州ボルチモア郡、ニューヨーク州ハドソン河流域、ニューハンプシャー州ホワイト山脈)の多くの河川では、水中の塩化物含有量が海水の約25%に相当していることが明らかになった。
Bandは米国時間8日、「(調査対象地域の河川では水中の)塩化物含有量が河口付近と同等になっている。生態系が劇的に変化している」と述べた。
河川によっては、凍結防止塩に影響されていない河川に比べ、夏場における塩化物含有量が約100倍に達していた。ボルチモアの飲料用貯水池に注ぐ川や、ハドソン河流域では、過去数十年間にわたって塩化物含有量が著しく増加している。
このまま対策を講じなかった場合、地域によっては今世紀中に、飲料に適した水が得られなくなる可能性があると、Bandは述べた。
水中の塩分の増加には多くの要因があるとBandは述べる。砂の代わりに塩を散布する方が、生態系に影響があるのは言うまでもない。不浸透性材料でつくられた路面の場合、雪や氷とともに塩分は流れ落ちて、排水路へ入り込んだり、周囲の地面に染み込んだりする。いずれにせよ、塩化物は、淡水系システムに混入することになる。
しかし、最大の要因は、市街地の開発に関連した道路の建設である。ボルチモアは、3つの調査地域のうち、市街地の開発が最も急速に進んでいる。それに対応するように、水中の塩分は増加している。
「都市開発の程度に完全に依存している」とBandは述べる。
水質データの蓄積は、過去数年間にわたっている。Bandは、ボルチモア地区で水中の化学物質を7年間監視している。また、地元の水質管理地区で得たデータも、調査結果を補うために使っている。
しかし、それでも、塩分濃度の上昇による影響を実際に計測するには困難を伴う。さまざまな環境要因に加えて、都市開発の度合いが影響するからだ。たとえば、道路を建設すれば、その路面から流れ落ちる塩分の量は増加する。Bandは、飲料水用の水源を将来的には他にも調査したいと思っている。
この問題の対策としては、まず、塩分の代わりに砂を使用することが挙げられる。また、薬品を使って硬水を軟化する代わりに、浄水フィルタを利用するのも有効だろうとBandは述べる。そして皮肉にも、有害な影響が多いと指摘されている地球温暖化も、雪や氷を減少させるという意味では有益であると、述べる人もいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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