Microsoftは来週、ライバルのGoogleに照準を合わせた新たなウェブ開発計画を明らかにする。
Microsoftは、同社が一般向けに公開するMSNなどの各サイトに関し、外部の開発者がこれらのサービスを利用する新しいアプリケーションを構築できるようにする計画を進めている。Googleなどのウェブ関連企業では、すでにこうしたやり方で自社のウェブサイトを促進している。
Microsoft幹部らがCNET News.comに明らかにしたところでは、同社は来週ロサンゼルスで開かれる「Professional Developers Conference(PDC)」で、この「ウェブプラットフォーム」戦略の詳細を明らかにするという。同社は、「MSN Search」を含む一部のサイトのAPIを公開するとともに、こうしたアプリケーションの開発用に機能を強化したツールを提供する意向だ。
同社では、これらの動きを通じて、「Web 2.0」あるいは「プログラマブルウェブ」と呼ばれることも多い新たなモデルを実現したいと考えている。このモデルは、既存のウェブサイトの一部をパーツとして使いながら新たなアプリケーションを開発する、というものだ。これらのウェブサイトを公開する企業では、自社のウェブサイトを、単なるウェブページのかたまりではなく、むしろOSのような開発プラットフォームとして捉えている。そのため、たとえばGoogle Mapsなどのサービスを使って、個人のブログから取得した位置情報を地図上にプロットするようなアプリケーションを外部の開発者が書くことも可能になっている。
しかし、Microsoftは新しいウェブ技術の人気も認識しつつ、同時に自社のドル箱であるWindowsやOfficeの利用も勧めなくてはならないことから、同社は難しい舵取りを迫られることになると、アナリストらは指摘する。
より多くの開発者にMSNのサービスを利用してもらいたいMicrosoftだが、同社のそのための動きを起こせば、開発者のマインドシェア獲得を目指して同社と争うGoogleとの戦いがさらに拡大することになる。この件に関して、Google関係者のコメントは得られなかった。現在両社は、Googleが雇い入れたMicrosoftの元幹部Kai-Fu Leeをめぐって法廷で争っており、そのため両社の敵対関係はここ数日でいっそう激しさを増してきている。
インターネット分野でMicrosoftと競合する企業--特にGoogleとYahooは、社外のウェブ開発者が、検索や地図のような自社のウェブサービスを利用するアプリケーションを開発できる仕掛けをすでに提供している。これらのアプリケーションはウェブブラウザ上で動作することから、少なくとも理屈の上では、どのOSで動くマシンでも実行が可能になる。
一方、Microsoftはこれまで常にWindows上で動くアプリケーションを社外の開発者に作らせようとしてきた。だが、WindowsにコミットするMicrosoftでさえ、オンラインでのウェブ開発の人気の高まりに対してもっと本気で対処する必要があると、アナリストらは述べている。社外開発者が多くのアドオン製品を開発するようになれば、それだけ多くのトラフィックが自社のウェブサイトに流れてくると期待できるからだ。
「いくつかの事柄をめぐって本当に激しい戦いが起こっており、Microsoftはこれに対処する必要がある。同社は、一般ユーザー向けの製品やサービスを出すほかに、開発者にも魅力的な製品やAPIを提供しなくてはならない」と、JupitermediaアナリストのMichael Gartenbergは述べている。「ウェブをプラットフォームとして捉える見方が広がっており、Microsoftはそこにも進出したいと考えている」(Gartenberg)
Microsoftはすでに、自社のウェブサイトの一部を開発者が利用できるようにしている。たとえば、同社の「MapPoint」には数年前からWebサービス用のインターフェースが用意されている。しかし、GoogleやYahoo、Amazon.com、eBayなど、ますます多くの企業が、自社のウェブサイトをプログラム可能にし、エンドユーザーがカスタマイズできるようにしていることから、Microsoftでも同様の戦略に沿った取り組みの強化を進めている。
PDCで何が登場するか
Microsoftは来週の開発者会議で、SOAP(Simple Object Access Protocol)経由で使えるMSN SearchサービスのAPIを公開する予定だ。MSN SearchのSeth Demsey( グループプログラムマネジャー)によると、非商用ライセンスの下で公開されるこのAPIを使えば、インターネットアドレス1つにつき、1日1万件の検索結果を取得できるようになるという。Microsoftはまたデスクトップ検索用のAPIもリリースする。
同社はほかにも、JavaScriptの「コントロール機能」を使って、同社の地図サービス「Virtual Earth」のデータを表示するための無償の商用ライセンスも発表する。一方、MSN Messengerグループでは、「Activity」ウインドウを活用したWindowsアプリケーションを開発できるようにする。これにより、顧客サービス担当者などがチャットセッション中に顧客情報を参照できるようになる。
Microsoftは開発者に対し、同社のウェブサービスに対応したアプリケーションを開発するよう呼びかけている。同社の幹部によると、これは1台のデスクトップPC上で動作するものよりも、オンラインで配信されるアプリケーションが増えているためだという。
MicrosoftのAdam Sohn(MSN事業部広報担当)は、「われわれは、インターネット全体で利用可能なものを開発したいと考える開発者と歩調を合わせ、プラットフォームや開発の内容を進化させる必要がある、と考えている。アプリケーションが増えれば、ユーザーにとっての価値も高まり、われわれのプラットフォームに関心を寄せる人も増える」と説明する。
さらに、Microsoftは来週、ウェブアプリケーションの開発を簡素化すると期待される複数のツールも密かに公開する。
Microsoftの幹部らは米国時間15日、MSNのインキュベーターウェブサイトである「Start.com」に関する、開発者プログラムの詳細を説明する。同サイトではRSSフィードやその他のウェブサイトの情報を、カスタマイズ可能な同一ページ上に表示できる。
同社はStart.comの詳細に関して口を閉ざしている。だが、同社社員のブログによると、このプログラムには、ウェブプログラマーにStart.com用のアドオン開発を呼びかける狙いがあるという。
Microsoftは来週のPDCで、「Atlas」のベータバージョンもリリースするとみられている。Atlasは、いわゆる「AJAX」というテクニックを使い、ウェブアプリケーション作成を容易にするためのツールだ。
Atlasツールキットには、将来的に「MSN Framework」というソフトウェアが含まれる見通しだ。これは、JavaScriptアプリケーション構築用のソフトウェアで、HotmailやMSN Spacesブログに今後登場するバージョンや、写真共有サービスといったMSNウェブサイトのサービス上で動作する。Microsoft社員の話では、ツールの共通化により、Microsoftのエンジニアはウェブサイトに新機能を追加しやすくなるという。
MSNのウェブエクペリエンスを担当するScott Isaacsは先ごろ、「同Frameworkにより、クライアント側コンポーネントモデル、ネットワークスタック、Firefoxとの互換性、そしてOO(オブジェクト指向)言語の強化が実現する。これで、クライアントを勝手にスクリプト化するのではなく、『エンジニアリング』が可能になる」とブログに書き込んでいる。
Isaacsによると、AtlasにはMSN向けに特化したツールが多く含まれているという。ASP.Netの開発チームが手がけるこの「Atlas Project」は、Microsoftの代表的な開発ツール「Visual Studio」のアドオンとして機能し、AJAXを使うインタラクティブなウェブアプリケーションの開発を簡素化するとされている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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