デスクトップをめぐる争い
プライバシー擁護派はYahooのこのようなインストール手法について、無料ソフトを推進するインターネット企業が長年採用してきたゲリラ的マーケティング手法の一種であり、同社のやり方に失望している、と非難している。プライバシー問題専門のコンサルタント会社PrivacyClueのRay Everett-Church社長は、Yahooが今回の件で、かつて踏み込んだことのない領域に足を踏み入れている、と語った。
Everett-Churchは、「(本来の目的以外の)ソフトがパソコンにインストールされるのを阻止するために、ユーザーがわざわざカスタムインストールしなくてはならないという例はこれまでなかった」と述べ、さらに「大半のユーザーは、初期設定のままインストールをするが、それにより不要なソフト一式が勝手にインストールされてしまうことなど全く予期していない。そのような(ユーザーの無知に乗じた)手法は卑劣だ」と語った。
このように自社のアプリやサービスを推進するために、こうした積極的手段を採用している企業はYahooだけではなく、また同社が最初というわけでもない。MSNやAmerica Onlineといった大手企業に加え、RealNetworksやClariaといった、より小規模の企業も、ユーザーが自社製ソフトをインストールする際に他のツールや機能も同時にインストールさせる手法を長年採用してきた。
この手法はあまりに一般化しているため、人々は自分のPCの支配権をめぐりインターネット企業各社が技術的争いを展開していることをつい忘れがちだ。ユーザーのPC内では、インターネット企業同士が、ホームページ、電子メール、マルチメディアプレイヤー、既定のウェブ検索について、他社製品が選択されている設定を自社製品に変更しようと攻防を繰り広げている。
「インストール中にチェックボックスを隠す手法は、ユーザーのデスクトップ上における影響力をさらに拡大したいと考える企業がよく使う手だ」とEverett-Churchは指摘し、さらに次のように続けた。「各企業はユーザーに対し、インストール中に何がインストールされているのかを明確に示し、(不要な)ソフトを削除する明確な機会を与える責任がある」
今回のケースでは、Yahoo Messengerソフトは他のソフトメーカーとの小さな争いを引き起こしている。仮にユーザーがホームページとウェブ検索の初期設定をそれぞれYahooのサイトと検索に変更し、後にそれを元に戻したくなった場合、MicrosoftのIEであれば、「ツール」→「インターネットオプション」→「プログラム」→「Web設定のリセット」の順に選択して行けば元に戻すことが可能だ。しかし、そうしたからと言って、必ずしもユーザーが自ら設定した元の状態を回復できるわけではない。むしろ、ウェブ設定をリセットすることによりMicrosoft IEの初期設定に戻されるため、例えばホームページと自動検索機能はそれぞれMSNのサイトと検索に変更される。
しかし、Yahooも簡単には引き下がらない。例えば、仮にユーザーが自動検索の設定をMSNかGoogleに戻した場合、Yahooはそのユーザーに再度Yahoo Searchに変更する気がないかどうかを尋ねるポップアップメッセージを送る。
Yahooは高性能インターネット電話サービスが付いた最新版Yahoo Messengerのテストを2005年の5月から行っており、8月上旬にリリースした。Karlstenによると、同社は今週から米国のユーザーを対象に「アップグレードを推奨する」ための通知を送り始めたという。同社は、Yahoo Messenger 6.0をリリースした2004年5月から、(ユーザーのPC内の)既定のホームページと検索を変更してきた。
Yahoo Messenger with Voiceには、デスクトップやシステムトレイからIMを起動できるショートカットも含まれている。またYahoo Extrasソフトは、IEに明確な形でリンク集を追加し、メールやショッピングといったYahooの各種サービスにユーザーを誘引する。しかし、同ソフトの「カスタム」インストールを行えば、ツールバー、ショートカット、Extrasソフトのインストールを拒否できる。
Yahooは、大半の人々がこれらの変化を気にしない、あるいは気付かないという事実に乗じている可能性がある。
「初期設定を全く変更しない人があまりに多すぎる」とEverett-Churchは嘆いている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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