フルブラウザ戦争が勃発--デファクトを狙うアプリ事業者の戦い

永井美智子(編集部)2005年07月06日 21時33分
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 PC用サイトが携帯電話から見られる「フルブラウザ」をめぐる争いが激しさを増している。無料で利用できるフルブラウザアプリが次々に登場しているほか、通信事業者もフルブラウザを内蔵した端末を市場に展開し始めた。

 通信事業者の端末にはじめから内蔵されているフルブラウザを提供するのがOpera、ACCESSなどの大手企業であるのに対し、フルブラウザアプリを提供する企業はいずれも数年前に創業したベンチャー企業だ。彼らはどういったビジネスモデルを描き、フルブラウザ市場で戦うのだろうか。各社の思惑を探った。

フルブラウザとは何か

 まず、フルブラウザとはどういったものかについて確認しておこう。一般的にフルブラウザとは、携帯電話からPC用のウェブサイトが見られるブラウザを指す。これまでの携帯電話のブラウザではcHTMLやHDMLのように、携帯電話向けの言語で記述されたサイトでないときちんと表示されなかった。PC用のサイトを読み込むことも不可能ではなかったが、サイトの一部しか表示されなかったり、レイアウトが崩れるといった問題があった。

 これに対してフルブラウザは、PC用サイトを携帯電話で見られるよう、サイトのレイアウトや画像の大きさなどを最適化して表示する。これにより、ユーザーは今まで携帯電話では見られなかったサイトも自由に利用できるようになる。

 なお、現在のところフルブラウザではFlashや一部のJavaScript、Javaアプレットなどは表示できない。このため「“フル(完全な)”ブラウザ」と呼ぶことには疑問の声も上がっている。ただし、ここでは一般的に使われている用語としてフルブラウザと呼ぶことにしたい。

 フルブラウザには大きく分けて2つの種類がある。端末にあらかじめ内蔵されているプリインストール型と、ユーザーがアプリケーションをインストールして利用するアプリ型だ。前者にはノルウェーのOperaが提供する「Opera」や、ACCESSが開発した「NetFront」などがある。OperaはauのCDMA 1X WIN W21CAやNTTドコモのビジネスFOMA M1000などに、NetFrontはドコモのFOMA N901iSなどに採用されている。後者にはjig.jpのjigブラウザをはじめとして、多くのフルブラウザアプリがある。

 フルブラウザアプリのメリットは、大きく3つある。まず、対応端末が多いことだ。プリインストール型の場合は機種が限られてしまうが、アプリ型ならばユーザーは端末とブラウザアプリを別々に選べる。

 2つ目は、通信料金にパケット定額制が適用されるため、ユーザーはパケット料金を気にせずにウェブサーフィンができる点だ。プリインストール型の場合、フルブラウザで利用した分の通信料金はパケット定額制が適用されない場合がある。例えばNTTドコモの場合、端末に内蔵されたフルブラウザで利用した分は、契約する料金プランに応じて1パケットあたり0.015〜0.2円のパケット通信料金がかかる。

 KDDIもフルブラウザサービス「PCサイトビューアー」の通信料金は当初従量課金となっていた。ただし5月からは定額制を採用し、メール、ウェブを合わせて月額5985円で使い放題としている。だが、フルブラウザアプリを利用した場合はインターネット接続とメールのみの定額プラン(月額4410円)で使い放題になる。

 3つ目は常に最新版のブラウザを利用できることだ。特にブラウザアプリは発展途上にあることもあり、バージョンアップの頻度が高い。新機能をどんどん利用できる点でユーザーにはメリットがあるといえるだろう。

 国内で携帯電話向けに初めてフルブラウザを提供したのはjig.jpだ。2004年10月に「jigブラウザ」をリリースし、一躍注目を浴びた。後を追うように2005年1月にはプログラマーズファクトリが「Scope」のパブリックプレビュー版を、3月には正式版をリリースした。また、4月にはユビキタスエンターテインメントが「サイトスニーカー」ベータ版を、6月にはアイビスが「ibisBrowser」ベータ版をそれぞれ提供している。

 いずれのアプリもPC用サイトのデータを一度プロキシサーバで読み込んで圧縮し、端末にインストールしたJavaアプリで表示する。ただし表示速度や表示形式、RSSリーダーなどの付加機能といった面で各社の違いが出ている。例えばjigブラウザやサイトスニーカー、ibisBrowserはPC用サイトのデザインをそのまま表示させ、ポインタを使って操作することでPCの画面に近い操作感を出している(写真1)。一方、Scopeは携帯電話の画面の横幅に合わせてサイトを表示し、上下のスクロールだけでサイトを見られるようにしている。携帯電話の下ボタンがTabキーの役割を果たし、サイト内にある次のリンクに移動するようになっている。既存の携帯電話ブラウザに近い操作感といえる。

写真1.各社のブラウザアプリでCNET Japanを表示した様子。
jigブラウザ、サイトスニーカー、ibisBrowserはポインタが表示されるのに対し、Scopeは選択したリンクがハイライトされる
jigブラウザ
Scope
サイトスニーカー
ibisBrowser
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