ワシントンD.C.--米連邦政府は、2008年までに所有するすべてのコンピュータを次世代インターネット上で動作させるとの方針を掲げているが、いまのところこの移行に対応できそうなのは国防総省だけといった状況だ。
米国時間6月29日に、政府と業界関係者が政府改革委員会に出席し、政府全体でのIPv6への移行に関する説明を行った。議会でこの問題が取り上げられたのは今回が初めてだ。
128ビットのアドレス空間を持つIPv6では、利用可能なIPアドレスの数が指数関数的に増加することから、PCをはじめとして、家電機器など各種のデバイスにもIPアドレスを割り当てることが可能になる。米国では現在ほとんどのコンピュータで、IPv4が動作している。IPv6では、データのルーティングやサービスとセキュリティの面で向上が見込まれている。
米政府説明責任局(Government Accountability Office:GAO)は、5月に公表した報告書の中で、「各種の政府機能がIPv6対応アプリケーションからメリットを享受できる可能性がある」と示唆し、具体的な例として、無線による移動検知センサーの関連するアプリケーションや緊急事態への対応に役立つようなものを挙げていた。
「われわれ全員が最高の国家安全保障システムを望んでいると私は考えている。そうしたシステムのなかには、互いがインテリジェントに接続し合うカメラ、センサー、第一発見通報システムなどが含まれる」と、同委員会を率いるTom Davis下院議員(バージニア州選出、共和党)は述べている。
「政府はこの機会を真剣に捉えていない」と言うのはHenry Waxman下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)だ。「われわれには2つの選択肢がある。つまり、30年前と同じくインターネット開発をリードするか、それともこの進化が通り過ぎるのを待って、後からキャッチアップを図るかだ」(Waxman)
GAOの報告書によると、実際には政府のコンピュータの多くで、すでにIPv6対応のソフトウェアが動作しており、それがセキュリティ上のリスクになっているという。
「アクセス権限を持たないユーザーに、IPv4のパケットに隠された“ゴースト”のIPv6アドレスを使うソフトウェアの利用を許せば、システムにとって重大なセキュリティ上の脅威となるが、この可能性をすべてのITマネージャが意識しているわけではない」と、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)のVerioでエンジニアリング・オーペレーション担当バイスプレジデントを務めるStan Barberは証言した。
29日に証言を行ったGAOの関係者らは、政府の各機関に対し、新ネットワークへの移行に先立って計画を立て、移行の過程で生じる可能性のあるセキュリティ上のリスクについて大きなものを特定しておくように求めた。GAOの報告書によると、あわせて22ある省庁のうち、保有する機器がIPv6対応かどうかを確認済みのところは4つだけで、移行に関するビジネス上のメリットや、それにかかる費用の見積もりを済ませているところは1つもなかったという。
「政府の移行計画はゆっくりとしか進んでいない」と、GAOのIT管理問題担当ディレクターで、同報告書の著者の1人であるDavid Pownerは語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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