米最高裁がファイル交換ユーザーの著作権侵害行為に対してPtoP企業側の責任を問う判決を下したが、これに大喜びしている人々がいるとすれば、それは音楽業界の関係者だろう。
多くのミュージシャンや作詞・作曲家、音楽出版関係者らは、PtoPネットワークの運営企業がユーザーの著作権侵害行為に責任を負うべきだとする最高裁の判決を歓迎する反応を示している。
PtoPネットワークは、知名度の低いバンドやミュージシャンにファン獲得の場を提供したが、違法な楽曲ダウンロードによって売上が減少し、彼らの収入にマイナスの影響を与えていた。
「PtoPを使ったファイル交換の大流行で、関係者全員が打撃を被った」と、Eigheenth Street Lounge Music(ESL)のレーベルマネジャーであるMatt Whittingtonは述べている。「だれもが自分の仕事に対する見返りを欲しいと思う」(Whittington)
ESLは、「Thievery Corporation」のメンバーらが設立したレーベルだ。メジャーレーベルと契約しようとする代わりに、独自のブランドをつくることに決めたこのグループは、今年ギリシャとポルトガルでナンバー1ヒットを記録した。ただし、同グループの売上枚数は年間約15〜25万枚にとどまっている。
「売上が30%減るとたいへんなことになる」(Whittington)
Jimmy Boudreauは、Sam BrownやHerman's Hermitsのレコーディングに参加したこともあるミュージシャンだが、同氏も今回の判決が知名度の低いアーティストに味方するものだとしている。
「私はオリジナルの曲を作曲して生計を立てている。それなのに、親戚が多数の曲を無償でダウンロードし、CDに保存したことを自慢する。オリジナル曲をつくるミュージシャンとして、それに対する私の反応は1つしかない。そうした行為が間違いだという態度を示すのだ。ファイル交換ネットワークが私の仕事に打撃を与えたことは間違いない」と電子メールに記している。
判決が下って数時間もしないうちに、American Federation of Musicians、Directors Guild of America、そしてWriters Guild of America, Westをはじめとする複数の団体が、今回の判決を支持する共同声明を発表した。
違法なダウンロードがはびこる時代のミュージシャンの生活は厳しい。ロサンゼルス在住のPerkというあまり売れないアーティストは先週、インターネットラジオ局のMercoraが主催したイベントで、CDを売るよりTシャツを売ったほうがいい実入りになると述べていた。Perkによると、彼の友人はCDを買うと口では言いながら、しかしそれを複製して友人にあげてしまい、彼に打撃を与えることを忘れてしまうという。
今回の判決には、有名なアーティストもコメントを発表している。
Lamont Dozierは1960年代に、Holland-Dozier-Hollandという有名ソングライターチームの一員として、「Nowhere to Run」「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」などの大ヒット曲をモータウンの歌手に提供していた。そんな同氏も、今回の判決に喜んでいるでいるという。
「私は、人々に愛される音楽をつくって生計を立てようと、これまで一生懸命働いてきた。そんな私にとって、今回の判決は次の世代のソングライターが繁栄するためのしっかりとした基礎を形作るものと思える」とDozierは声明のなかで述べている。「本当に音楽を愛している人は、誰もがこの判決を喜んでいるはずだ」(Dozier)
音楽業界にとって、今回の判決で唯一マイナスとなる点があるとすれば、それは音楽配信の分野かもしれない。ラジオ放送というフォーマットが、若いミュージシャンや新しいバンドに、ほぼ門戸を閉ざしていることは、同業界の幹部でさえ認めている。PtoPネットワークは、こうした状況にカウンターをあてる役割を果たしてきた。
「われわれがフリーの楽曲ダウンロードやファイル交換から被害を受けたとは思わない。われわれの抱えるアーティストと話してみても、彼らが違法ダウンロードの被害を受けているとか、うまくつけ込まれているとは感じていないことがわかる」とK RecordsのMariella Luzは言う。「どちらかといえば、ファイル交換は知名度の低いバンドをプロモートするのに役立っており、マイナスの影響を与えているとは思わない」(Luz)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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