デベロッパーを味方に付けることが成功への道
さて、Amazonはなぜ検索エンジン上でこれほどまでに優位なポジションを独占しているのでしょうか。それは、グーグルに限らず近頃の検索エンジンが、該当ページの被リンク数を基準に表示順位を決定するアルゴリズムを採用しているためです。簡単に言えば、多くのサイトからリンクされていればいるほど、そのページは検索エンジンで上位に表示されるということです。すなわちAmazonの各商品ページは、多くのサイトからリンクされているのです。
Amazonがたくさんのリンクを獲得している理由は2つあります。ひとつはAmazonのアフィリエイト施策であるアソシエイト・プログラム、そしてもうひとつがWebサービスです。
Amazonのアソシエイト・プログラムは、Amazonの商品にリンクを貼って自分のサイトで紹介し、そのリンク経由で売り上げが成立した場合に紹介料がもらえるプログラムです。自分でウェブサイトを運営する個人や企業は、紹介料というインセンティブの下、Amazonへリンクを張っています。これによりAmazonは、多くのサイトからリンクを得ることに成功しました。
しかし、いくら紹介料というインセンティブでリンクが獲得できても、サイト上に手動でリンクを貼り付けるという手間のかかるシステムでは、これほどまでに多くのリンクを得ることはできなかったでしょう。そこで必要となったのは、手動ではなく自動の手段、つまりプログラムでした。
Amazonにリンクしてもらうためのプログラムを、社員以外のリソースを使って開発するにはどうすれば良いか。そこで同社が考えついたのがWebサービスです。Amazonは、世界中のデベロッパーを味方につけるため、Amazon・Webサービスという形で自社の持つ商品データベースや検索機能などのコアバリューを公開したのです。
その結果、デベロッパーが開発したアプリケーションはAmazonへ大量のリンクをもたらし、ネットワークを介してAmazonの商品データを波及させました。また、そのデベロッパーが開発したツールを使って、Amazonの商品を紹介するエンドユーザーも現れました。AmazonはWebサービスの提供によってデベロッパーを味方にしただけでなく、デベロッパーが作ったツールのユーザーをも味方にすることができたのです。
AmazonがWebサービスの提供に至ったのは、検索エンジンを視野に入れてインターネット全体を評価し、そこにWebサービスを落とし込む意義を見つけられたからでしょう。やみくもにWebサービスを公開したのではなく、Webサービスを公開する意味を正しく理解した上で提供に踏み切ったのです。後にAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏は、Webサービスの提供について、インターネットのビジョナリーとして知られるティム・オライリー氏の助言に従ったのだと述べています。
自社の持つデータを、インターネットというネットワーク上で広めることがどのような価値をもたらすのか。それを正しく把握するためには、インターネットで起きている多くの事象を総合的に考える必要があります。自社のサイトだけを見て損得勘定をしていては、Webサービス公開の突破口は見出せません。
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