検索連動型広告のパイオニアとして、オンラインマーケティング業界に新たな風を吹き込んだOverture Services。ROI(投資対効果)が見えやすい広告として、この数年間で一気にこの市場は拡大した。Overtureは2003年10月、Yahoo!に買収され、2005年3月には今後社名を「Yahoo! Search Marketing Solution」(YSMS)に変更することも発表している。Overture Services 社長 兼 Yahoo! 上級副社長のTed Meisel氏と、Overture Services, Overture International プレジデントのBrian Steel氏は、この市場と同社の現状をどう見ているのか。また、RSS広告など新たな取り組みも始めた同社の今後の展開はどうなるのか。来日した両者に聞いた。
米スタンフォード大学ロースクールにて法学博士号を取得した後、McKinsey & CompanyやTicketmaster Online-CitySearchを経て、1998年12月にはOverture Servicesに入社、COOに就任した。1999年5月には社長を兼務し、2000年1月にCEOに就任。2003年10月、Yahoo!に買収されたことで、Yahoo!上級副社長を兼務する。
米デューク大学にて経済学士号を取得した後、Shearson Lehman BrothersやOn Demand、Idealabなどを経て、2003年6月にOverture Servicesに入社。Overture Internationalプレジデントとして、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、日本および韓国を含む国際事業を統括する。
--ここ数年、検索業界の注目度が非常に高くなっています。広告ビジネスとして成長が見込める分野であることがその要因だと思うのですが、検索連動型広告ビジネスのパイオニアであるOvertureとして、この市場をどう見ていますか。
Meisel: 国によって違いますが、平均的に人は自分の時間の約15%をオンラインで過ごすとされています。広告主も、こうしたライフスタイルに合わせる必要があるのです。
新しいメディアが登場した場合、こうしたメディアを初期に活用して広告を出そうと考える広告主は、通常その広告でブランド力をつけようとは考えず、ダイレクトメールのようにすぐに反応が返ってくることを期待して広告を出します。ケーブルテレビも、始まった当初はブランドを意識したイメージ広告のようなものはありませんでした。テレビ画面に直接電話番号を掲載し、ユーザーからの反応がすぐにわかるような広告を出していたのです。10年以上経過して、やっと大企業がブランド効果を狙った広告を出稿するようになったのです。
検索連動型広告は、インターネット上のダイレクトメールのように、顧客の反応がすぐに得られることを目的としたものでした。それが今、分岐点に来ています。広告主は、いまやインターネット上に広告を出すべきかどうかを迷うことはありません。オンライン広告はすでに普及しており、今広告主が迷っているのは、「ネット上でどのような広告を出すか」なのです。今後われわれの役目としては、検索連動型広告をうまく使ってもらい、ブランド広告としても利用してもらうこと、また、ほかの広告媒体と統合できるようなサービスの提供を実現することです。
Overture Services 社長 兼 Yahoo! 上級副社長 Ted Meisel氏 |
一方で、オンライン広告が普及したとはいえ、まだ電話帳にしか広告を出していない企業が多く存在することも事実です。こうした企業にもアプローチしたいと考えています。オンライン広告への投資金額は、広告市場全体の3%程度でしかありません。この比率を15%にまで引き上げるため、大企業にブランド広告として利用してもらうことと、オンライン広告未体験の中小企業や個人事業主へのアプローチを進めたいと考えています。
Steel: 広告において重要なことは、ターゲットを絞ることでしょう。広告主はよく「支払った広告料金の半分しか効果が出ていない。しかもどの部分に効果があったのかさえわからない」と言いますが、スポンサードサーチはこれまでの広告とは違い、効果がはっきり見えます。適切な料金の広告を適切な顧客に対し、適切に提供できるので、広告主もROI(投資対効果)を把握しやすくなります。こうしたサービスへの投資は今後も増えるでしょうし、市場も大きくなると思います。
--確かにスポンサードサーチは、ダイレクトメールの置き換えに適していますね。ただ、ブランド広告になり得るかどうかについては、まだ疑問に感じている広告主が多いのではないでしょうか。
Meisel: スポンサードサーチはブランド広告としての役割を果たせると思いますよ。それを証明するような事例も一部で出始めています。調査会社のcomScore Networksとわが社が共同で行った調査についてお話ししましょう。この調査は、家電分野において、スポンサードサーチを見たあと顧客がどう行動したかを調べたものです。スポンサードサーチで実際の購入に結びついたのか、広告を見てから商品を購入するまでの時間はどうだったのか、購入場所はオンラインだったのか、オフラインだったのかなどを調べました。その結果、購入までの時間は約60日後で、しかも90%の購入者はオフラインで商品を購入していたのです。
ブランド広告は、効果が現れるまでに時間がかかるものです。時間をかけて商品を吟味し、オフラインで購入するというパターンを見て、予想以上にスポンサードサーチがブランド広告としての役割を果たしていることがわかりました。インターネット検索は、顧客にとって商品のリサーチ段階といえるため、購入前の好みを決める上で大きな力を持ちます。その段階で、広告が何度も表示されているのでブランド効果が高まったのでしょう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス