LLPという組織の新しいカタチは働き方を変えるか

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 この秋からLLP(有限責任事業組合)という新しい組織制度が導入される。LLPとは、出資者が出資額までしか事業上の責任を負わず、しかも法人税が課されない新しいカタチの組織だ。

 欧米ではすでに広く活用されており、ベンチャーやプロフェッショナルのように少人数で生産性の高い職種や業態で採用されることが多い。日本では、コンテンツ制作委員会やジョイントベンチャー、企業内起業のためのビークル(器)としても活用されることが期待されている。「独立か就業か」あるいは「雇用者か経営者か」という二者選択状態から、新たにパートナー(組合出資構成員)という選択が増えることで、働き方はどのように変わっていくのだろうか。

コンテンツ制作に適した器としてのLLP

 6月1日、クリエイター支援で知られるクリーク・アンド・リバー社とそのシンクタンク組織であるC&R総研が、経済産業省の支援を受けて「〜コンテンツ製作・制作における契約のあり方〜コンテンツ・プロデューサー支援セミナー」というセミナーを行った。二部形式で構成された同イベントでは、前半に制作会社が放送局などの発注元とどう付き合うかを定めた下請法に関して説明が行われ、後半では資金調達のためのモデル契約書の解説やその受け皿となる組織のあり方について議論が行われた。

 後半のモデル契約書は、経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)主催の研究会で作成されたものだ。極めて柔軟性の高いものとなっており、近くウェブ上に公開される予定だ。セミナーでは、メディアコンテンツ課課長補佐の和久田肇氏がこれまでのコンテンツ政策の概要を紹介するとともに、現在開かれている国会で成立したばかりのLLPについて詳しく説明した。そしてその後、(また宣伝くさくなるが)僕がこの経済産業省の研究会に参加しているときから構想していた、海外と共同プロデュースする作品の権利運用と資金調達を行うビークルとしてのLLPについて紹介した。

これまでない企業のカタチ

 もちろん、LLPは必ずしもコンテンツ制作のためにだけ整備されたものではない。より広範な会社法(商法、商法特例法、有限会社法を集約したもの)の改正と連携して整備された有限責任事業組合法によって定められたもので、その業種は問わない。

 会社法の改正により、会社はこれまで合資・有限・株式の種類があったが、今後新たに設立されるものはすべて株式会社となる。期限付きの特例とされた「確認会社(資本金が1円の株式会社)」もそのまま存続できるようになった。と同時に、有限責任事業組合法によって、これまでの任意事業組合の拡張版にあたるLLPが新設された(今回の法改正では、LLPの法人版であるLLC(合同会社)も整備されることになっているが、LLPほどに明確な規定がいまだになされていない)。

 これまであった任意事業組合はジョイントベンチャーなどに適した組織形態ではあったが、その組合員は無限責任、つまり発生した負債に対して金額に上限なく全ての責任を負うというリスクが付きまとった。このため、比較的確実な事業に対してのみ活用されてきた。これに対して、会社は有限責任であり、株主となっても事業の負債を背負うことはなかったが、株主総会や取締役会などの非常に詳細な取り決めに従って意思決定を行わねばならず、法人であるがゆえに法人税が課税されるというデメリットがあった。

 LLPは、組合と会社のいいとこ取りをするために作られたものだ。責任は有限で、出資者が自ら経営を行うので意思決定は簡素化される。さらに、LLPには課税されずに出資者に直接課税されるため、LLPで法人課税が課された上に出資者への配当に課税される二重課税を回避できる。

 すでに欧米では数多く設立されている組織形態であり、特定の人数のメンバーが集まって何らかの事業を起こす際によく使われる。パテントベンチャーやコンサルティング会社、プロデュース会社のように、「人が資源」という組織での活用が多いのが特徴だ。

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