日本IBMは5月31日、ノートPC「ThinkPad」の研究・開発拠点であった大和事業所に、新たにデジタル家電の開発支援やコンサルティングを行う専任部隊を設置すると発表した。ThinkPadの開発で培ったノウハウを家電メーカーに提供する。
専任部隊は当初100名程度で開始する。デジタル家電に特化した部隊は米IBMグループでも初めて。日本や中国、韓国などの家電メーカーを顧客とする。
デジタル家電は高機能化に伴ってソフトウェアが複雑になっており、コードの量も急激に増えている。その一方で製品サイクルは短くなっており、メーカーは短期間で膨大な量のソフトを開発する必要に迫られている。IBMはソフトの開発プロセスを効率化させるためのコンサルティングを行ったり、複数の製品で共通に利用できるソフトウェア部品を提供したりすることで、家電メーカーの製品開発を支援する。
同社が提供するソリューションは、(1)コンサルティングによる開発プロセスの変革支援、(2)ソフトウェアおよびハードウェアの開発支援・受託、(3)開発ツールの提供、(4)ソフトウェア部品の提供の4つ。「開発プロセスをきちんと管理することで品質を高め、コストを下げることができる。また、共通のソフト部品を利用することで、製品に新しい機能が簡単に追加できるようになる」(同社取締役 専務執行役員の内永ゆか子氏)
内永氏によると、実際に同社のコンサルティングを利用したカーナビメーカーの場合、開発期間が約25%短縮したという。
米IBMがPC事業を中国Lenovoに売却したことに伴って、大和事業所にいたThinkPadの開発メンバーはレノボ・ジャパンに移籍した。しかし、「バッテリーや熱処理の問題などについて、ThinkPadの開発をサポートしていた人間が大和事業所に残っている」(内永氏)といい、これらのノウハウを生かすとしている。
同社は6月1日付けで、高度な計算能力を必要とする研究機関や企業に向けてスーパーコンピュータのシステム設計や技術支援を行う「ディープ・コンピューティング開発研究所」を大和事業所内に新設することも明らかにしている。
今後大和研究所はデジタル家電の開発支援とディープ・コンピューティング開発研究所の2つを主軸事業とする計画だ。「大和事業所にいる全従業員の約2500人のうち、将来的にはおよそ半分の人間がこの2つの事業に携わるようになるだろう」(内永氏)
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