また、アップルがクローンの問題を回避するために、独自のチップセットを開発する可能性もあると、Microprocessor Report編集長のKevin Krewellは指摘する。しかし、チップセットの開発は、マイクロプロセッサの開発と同じくらい複雑で難しく、コストもかかる(しかもマイクロプロセッサほど利益をとれるわけではない)。PC/サーバメーカーの大半は、チップセットの自社開発を数年前から縮小している。
さらに、すべてのソフトウェアをIntelチップ向けに移植するという問題もある。Mac OS XはIntelチップでも動作するUnixがベースとなっているが、しかしすべてのソフトウェアを移植するには時間と費用がかかる。また、AppleがIBMのPowerチップでマルチメディア機能を処理するAltivec命令セットまで移植するかどうかもはっきりしない。そして、AppleがIntelのマルチメディ処理用命令セットから同等のものを見つけられなければ、システムのパフォーマンスに影響が生じかねない。
Krewellはさらに、Intelチップを採用してもAppleのマシンの性能が必ずしも向上するとは限らない、と付け加えた。IBMは、Apple向けにデュアルコアチップを開発することもできる。実際、同社はMicrosoftからまもなく登場するXbox向けに3コアチップを開発したばかりだ。Xbox用チップの設計は、Microsoftの発案部分も含まれ、Microsoftが所有権を保有しているが、IBMがApple向けに同様のチップを考案することは可能だ。同社は、PlayStation3向けのCellプロセッサも開発した。Cellには、Powerプロセッサ1基のほかに、ヘルパーコア(「相乗演算処理装置」)が8つ搭載されている。どちらのチップも3GHz以上の速度で動作し、Intelの現行チップの動作速度に近い。
IBMはまた、消費電力の壁も乗り越える可能性があるとKrewellは指摘する。同社は必要とあれば、それを実現するための技術をライセンスすることもできる。たとえばソニーは、Cellプロセッサ用に、Transmetaから消費電力効率化技術のライセンスを取得した。また、実際にIBMでもTransmetaの一部の技術を数年間ライセンスしていたことがある。
Intelプロセッサへの移行は、Appleの企業文化の問題も提起する可能性がある。同社は長い間、高いグラフィック処理性能が求められるMacには、PowerPCアーキテクチャのほうが適していると主張してきた。AppleのシニアバイスプレジデントPhil Schillerは、動作速度で劣るPowerPCチップを積んだMacで、Photoshopなどのプログラムが、Pentiumの最上位チップ搭載PCよりも高速に動く様子を示すデモをMacworldで何度も行っている。
両社の交渉に関する今回のリークは、AppleがIBMとの関係で優位に立つための仕業という可能性が最も高いと、Krewellは考えている。
「Appleは、IBMに無視されたと感じている。IBMがゲーム業界の各社に注意を向けすぎだと感じているのだ」とKrewell。「これは単に、AppleがIBMに喝を入れるための策略だ。Appleが真剣かどうかはだれにもわからない。Wall Street JournalがAppleの企業秘密を漏らしたとして訴えられたことがこれまでにあっただろうか」(Krewell)
なお、Appleは今年に入って、自社の新製品が発表になる前にその情報を明らかにしたMacファンサイトを訴えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス