100ドルのノートPCが、2006年にも登場することになりそうだ。5月16日に東京都内で開催された、世界情報社会サミット(WSIS)のテーマ別会合である「東京ユビキタス会議」において、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授でメディアラボ所長のニコラス・ネグロポンテ氏が100ドルPCへの取り組みについて紹介した。
このノートPCは、発展途上国の初等・中等教育機関向けに開発されている。ネグロポンテ氏は「教育こそが(途上国が抱える問題の)共通の解決策だ」として、子ども1人につき1台のノートPCを学校がそろえられるようにしたいと話す。
MIT教授でメディアラボ所長のニコラス・ネグロポンテ氏 |
「ノートPCが教科書の代わりになるだろう。実現すればこれは大きなインパクトがある。教師が不足している学校や教員の知識が足りない地域では、PCが補完的な存在になりうる」(ネグロポンテ氏)
100ドルという価格については、OSにLinuxを採用することで実現可能になるとみている。「現在販売されているノートPCの価格の半分は、広告やマーケティング費用によるものだ。残りの50%のうち、30%はディスプレイの費用だが、これは25〜30ドルで製造できるめどがついている。そして残りの15%は、OSのコストだ」(同氏)
2006年にはこのノートPCのプロトタイプをリリースする予定で、中国、ブラジル、米国など5〜6カ国で展開する考えだ。
同会議には世界各国の代表が集まり、情報通信技術に対して期待のコメントを寄せた。例えば総務大臣の麻生太郎氏は、情報通信技術が教育や医療、福祉、高齢化など21世紀の社会が直面する問題を解決するのに役立つと話す。いつでもどこでもインターネットに接続できる環境が整えば、遠隔授業や高度な遠隔医療などが実現できるというのだ。「近年の情報通信技術の革命は、19世紀に起きた産業革命に匹敵するものだ」(麻生氏)
スイス連邦通信委員会委員長のマーク・フューラー氏は、「すべての人に情報に対してアクセスできる権利をもたらしてこそ、情報通信技術の意味が生まれる」と話し、世界の最貧困層の人々がインターネットにアクセスできる環境を整えることが必要だと訴えた。また、国連大学学長のハンス・ファン・ヒンケル氏はデジタルデバイドの問題を挙げ、100ドルのノートPCやフリーソフトなどの取り組みがこの問題を解決するだろうした。
国際電気通信連合(ITU)事務総局長の内海善雄氏は、ユビキタス社会を実現させるためには国際的に技術の標準化を進め、相互運用性を保証することが欠かせないと指摘した。また、プライバシーやセキュリティの問題を解決し、ユビキタス社会のあるべき姿についての共通ビジョンを構築する必要があると訴え、今回の東京ユビキタス会議がその土台になるとした。
東京ユビキタス会議は5月17日まで開かれる予定で、デジタルデバイド解消のための取り組みやユビキタス社会の実現に向けた課題などが議論される予定だ。また、会場ではRFID技術や通信技術などの展示も行われている。
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