Googleがプライバシーやセキュリティに関して、一部の人々からまた反感を買っている。今回問題になっているのは、同社が開発したウェブアクセス高速化アプリケーション「Web Accelerator」で、このツールがページを削除したりパスワード保護されたコンテンツを表示してしまうという。
苦情の的となっているWeb Acceleratorは、Googleが米国時間4日にリリースしたもので、このツールのユーザーに同社のサーバにキャッシュされたサイトのコピーを提供することで、ウェブページへのアクセスを高速化する仕組みになっている。
これは時間のないユーザーには便利なツールだが、一部にはこのソフトウェアに害を及ぼしかねない欠陥があることをさっそく見つけた人々もいる。これらの人々は、この欠陥によって、非公開のディスカッショングループやパスワード保護されたページのキャッシュコピーが、Web Acceleratorユーザーに見えてしまうおそれがあるとしており、Googleもこの欠陥を認めている。
たとえば、ウェブユーザーがWeb Acceleratorを使ってあるディスカッショングループのページを開き、別のグループメンバーの名前を見ると、ウェブユーザーはその別のメンバーとしてサインインしたように見えてしまう場合がある。ただし、Web Acceleratorは、「HTTPS」プログラミング言語で記述された、銀行やクレジットカード会社のページなどのセキュアなウェブサイトはキャッシュしないため、この欠陥で金融取引などのデータが危険にさらされることはない。
Googleは現在この欠陥の修正に取り組んでいるが、ただしこの欠陥はそれほど深刻なものではないと見ていると、同社ウェブ製品担当バイスプレジデントのMarissa Mayerは述べている。「実際よりも悪く思われている。われわれはユーザー名の入ったページをキャッシュした。しかしユーザーは実際にはサインインしていないので、そのユーザーとして操作することはできない」とMayerは述べ、この欠陥の影響を受けたのは少数のサイトだけだと付け加えた。
「われわれは、ユーザーに最大限のセキュリティとプライバシーを提供することに力を注いでおり、この問題を急いで解決するべく作業を進めている」(Mayer)
さらに、プライバシー擁護者らは、Web Acceleratorが収集するデータの範囲に懸念を示している。Googleのプライバシーポリシーが、ユーザーのプライバシーに関するいくつかの重要な問題に対処していない、というのが彼らの言い分だ。これらの人々は、Googleが何百万もの人々から大量の情報を収集できる巨大な市場調査会社になりつつあるという大きな不安が、ユーザーのウェブ閲覧行動をモニターするWeb Acceleratorの機能によっていっそう強まっていると指摘している。
「Googleがこの新製品を使ってやろうとしているビジネスは市場調査だ。彼らはユーザーがインターネット上でどんなことをしているのか、何を読んでいるのか、何を買っているのかといった事柄を調べるつもりだろう」というのはプライバシー/セキュリティ分野の専門家であるRichard Smith。同氏はComputerbytesman.orgというウェブサイトを運営している。「ユーザーのクリックストリームを集めて、アクセスしたURLを調べるだけでも、膨大な情報が得られる可能性がある」(Smith)
これに対し、Web Acceleratorは市場調査用ツールではないと、GoogleのMayerは述べている。同氏によると、Googleは、一般ユーザーが同社の検索サイトを利用する時と同様の速さで、他のウェブサイトへもアクセスできるようにするために、このアプリケーションを開発したという。ユーザーがこのツールによって月に2〜3時間ウェブサーフィンの時間を節約できれば、その分多くの時間をGoogleでの検索に費やす可能性があると、Mayerは理由を説明した。
セキュリティの欠陥に関して、MayerはGoogleが脆弱なウェブページをキャッシュする機能を停止していると述べた。同氏によると、この問題はごく一部のウェブサイトでしか生じておらず、その多くはディスカッショングループだという。これらのサイトではヘッダにキャッシュを行わないよう指定する情報が正しく記述されていないためにこの問題が生じたと同氏は説明した。Googleはまた、この問題の解決に取り組むためにウェブ管理者らと連絡をとっているところだという。さらに同社は、今後この問題の再発を防ぐためのアルゴリズムを開発できないかどうかも検討していると同氏は述べた。
これとは別に、ウェブデザイナーらの間からは、Web Acceleratorを使うとJavascriptのコマンドが無効になるとの批判も出ている。具体的には、前のページに戻るためのボタンが効かなくなってしまう場合がある。Google広報担当のNate Tylerは、同社がこの問題についても調査していると語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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