--そうなると、ICANNとの対立は避けられないのでは。
そうは思いません。ICANNと対立するかどうかは(その他の多くの)事柄によります。
私はICANNを敵だとは考えていません。事実、ITUはICANNのプロトコル支持組織(Protocol Supporting Organization)の設立メンバーです。私がITUを代表して、設立文書に署名をしたのです。われわれは出来る限り、ICANNを支援しようとしてきました。しかしご存じの通り、ICANNの責任範囲は明確とはいえない・・・国連作業部会の活動は、この問題に光を当てる非常によい機会となっています。
--あなたは過去にさまざまな問題--おそらくはスパムやコンテンツにも言及してきました。ITUはどの問題に直接関与するべきなのでしょうか。
スパムやセキュリティを含むすべて・・・と言うことは可能ですが、セキュリティというのは少し違うかもしれません。というのも、われわれはすでに長い間、セキュリティ(の実際的管理)に取り組んできたからです・・・ 。
プライバシーの問題は、技術というより、政策が関与する部分が大きいと思います。この問題は各国の政府が単独で、あるいは地域、国際レベルで協力しながら対処すべき事柄です。言論の自由も、純粋に技術的な問題とはいえません。これは政治的に、非常に慎重な対応が求められるテーマですからね。さまざまな政策問題がからんでいます。もちろん、必要な協力は惜しみませんが、この問題はITUの管轄ではありません。
--最上位のルートサーバ(インターネットの利用を可能にしている中心的なサーバ)の運営・管理はITUが行うべきだと思いますか。
この件については、活発な議論が続いています。現在のICANNによる管理は、米国という一国の政府による管理だと考えられています。変化が求められていることは間違いありません。よりよい仕組みが必要だという点において、異論を差し挟む余地はないと思います。
われわれはインターネットの価値を減じるつもりはありません。その性質上、ITUはすべての公衆通信網に関心を持っています。われわれにはたくさんの専門知識がありますし、経験も豊富です(編集部注:インタビュー後、ITUの弁護士はITUがルートサーバの運営の監督に関心を持つ可能性はあるが、ルートサーバの運営そのものを手がけることはないと述べた)。
ITUは現在、国番号の割り当てを行っています。これをトップダウンのやり方だという人もいます。私はこのトップダウンのアプローチをIPv6に活用することを提言しました。そうすれば、これまでとは違う、新しいアプローチを編み出すことができるかもしれません。ITUのトップダウンのアプローチは、IPv6には適さないと見なされています。しかし、IPv4のボトムアップのアプローチが最良だと考えている人もいません。私は両者の間に解決策を見つけたいと考えていますし、またITUのメンバーからもさまざまな意見が寄せられています。
--それはITUがIPv6アドレスの割り当てを行う--つまり、ノルウェーには10兆、スウェーデンには20兆といった具合に、各国にアドレスを割り当てる業務を担当するということですか。
そうです。私はその可能性があると申し出ました。(この件については)政府機関だけでなく、業界の専門家とも議論しましたが、ITUにその能力はないという意見はありませんでした。
しかし、この影響が多方面に及ぶ可能性があることは理解しています。インターネットでのサービスの安定性を高め、その健全な成長を促すためには、関係者の協力が必要です。IPv6の認知度は、まだあまり高くありません。この段階でわれわれがこのシステムを正しく理解し、管理することができれば、将来起こりうる問題を避けることができるでしょう。
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