--シリコンチップに代わるものが登場すると思いますか。
私は量子ドットやナノテクノロジーといったものが、現在の主流であるシリコンに取って代わるという考えには懐疑的な見方をしています。もちろん、これらの技術を使えば、非常に高い周波数を持った極小のトランジスタを作ることができますが、それを10億個連結できるかどうかは別の問題です。トランジスタを小さくすればいい、という話ではないのです。
私は、チップ分野の技術が複雑なマイクロストラクチャを構築するための基礎技術になる、と考えています。この技術は他のものに取って代わられるのではなく、むしろ他の多くの領域に浸透しつつある。たとえばMEMSやDNAチップ--これらのマイクロ流体デバイスは、チップ上に構築された小さな化学実験室です。(シリコンは)非常に強力な技術であり、さまざまな用途に用いられることになるでしょう。現時点で、シリコンに匹敵するもの、シリコンに取って代わるものが存在するとは思いません。
ただし、新興技術を取り入れる余地がないといっているのではありません。カーボンナノチューブなどは、さまざまな金属層に組み込むことができると思います。しかし、これが(シリコン・トランジスタの)代用品になるとは思えない。われわれはこれまでに約2000億(ドル)を、デジタル・エレクトロニクス分野の研究開発に投じてきました。
--ムーアの法則の限界は多くの人が指摘してきました。こうした指摘を、真剣に考えたことはありますか。
この10年は、そうした記事をたくさん見た気がします。私自身、1ミクロンが(プロセス技術の)限界だと考えていたときがありました。ところが、それは限界などではなく、この壁はあっという間に破られました。私は次に、0.25ミクロンこそ限界ではないかと思いましたが、その壁も破られました。現在は0.1ミクロン未満となっています。65分の1ミクロンが達成される日も遠くないでしょう。少なくとも短期的には、進化の限界は見えません。
--これほどのコンピューティングパワーを人類は何に使うのでしょうか。
科学の領域には、コンピューティングシステムの性能がネックとなって、研究が進んでいない重要な問題がいくつかあります。私は先日、スタンフォード大学のBarbara Block教授と話をしました。彼女の研究チームは海洋生物にタグを付けていますが、回収される大量のデータに分析が追いつかず、研究者はあっぷあっぷしています。同じことは、他の多くの科学領域にもいえます。データが人間の処理能力を超える速度で生み出されているのです。
--2ヶ月後にはPaul OtelliniがIntelのCEOに就任します。彼へのアドバイスはありますか。あるいは、すでにアドバイスはされたのでしょうか。
彼からは、まだアドバイスを求められていません(笑)。先日、Intelは組織変更を行い、プラットフォームに重点を置くようになりました。今回の変更には、今後の方向性に対するPaulの意向が大きく反映されています。これは重要な方向性だと思います。市場によって求められているものは異なりますが、このやり方なら、多様なニーズに対応することができますからね。今回の方向転換は非常に適切なものだったと思います。
Paulは技術系の博士号を持っていないという点で、歴代のCEOとは異なります。しかし、現在の彼は私よりも技術に明るい。マイクロコンピュータ部門のトップを務めた経験もありますし、人脈も豊富です。
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