では、メーカー側はどうやってこの問題と戦えばよいのだろうか。グレイマーケットだけでなく偽造行為とも戦うために、今年業務の範囲を拡大したAGMAでは、メンバー各社が従うべきブランド保護ガイドラインを制定している。AGMAのウェブサイトによると、このガイドラインの目標は「技術製品の違法な取引を困難で無益な、望ましくないものにする」ことだという。
AGMAのメンバーであるHPと3Comは、グレイマーケット業者を相手取った訴訟を起こし、この目標を達成しようとした。
AGMAメンバーには両社以外に、Cisco SystemsやLexmark International、Western Digital、Nortel Networks、American Power Conversion、Maxtor、Hitachi Global Storage Technologies、Seagate Technologyなどが名を連ねている。
しかしインターネットはグレイマーケットの問題を拡大させたと同時に、違法な製品流通の追跡/排除を請け合うNet Enforcersなどの企業も誕生させた。
たとえばGenuOneは、偽造品やグレイマーケット商品のネットオークションを監視するソフトウェアを販売している。Pretection International(本社:オランダ、ハーグ)では、グレイマーケットと戦うメーカーにさまざまなブランド保護や法執行サービスを提供している。
2002年に創業したNet Enforcersでは、35人の従業員が各種のオークションに目を光らせ、不正な業者がメーカーの知的財産を利用して、自らを正規の業者と偽ることがないようにしている。
「われわれは、高度な調査方法によってパイプの漏れを見つける配管工のようなものだ」とNet EnforcersのLoomisは言う。「われわれが管理を続けているのは、ゆっくりと進行する洪水だ。われわれはメーカーとともに、この問題をゆっくりと解決し、メーカーの流通チャネルの再構築を行っている」(Loomis)
Net Enforcersの検査員は、違法の疑いのあるオークションを見つけると、削除通告を発行する。これはインターネットサービスプロバイダ(ISP)に著作権侵害容疑行為を削除させるという、米のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)で制定された著作権法執行手段の1つだ。
Net Enforcersではグレイマーケット商品を泳がし、シリアルナンバーを使ってその流通経路を追跡することも行っている。1つの業者が大量の製品を「横道」に流していれば、Net Enforcerはその業者に対し、合法的な流通とは何かという内容の助言を与えることもある。
同社は、この戦いは終りのないもぐら叩きではないとしており、それほど悪質でないグレイマーケット業者らに対しては、教育するほうが永続的な解決策となるのだと主張する。
「グレイマーケットの人々の大部分は、陰謀を働こうとはしていない。全体の70〜80%のケースでは、業者は事情が分かっておらず、利用されてしまっている。彼らは製品が再販可能だと教えられてその製品を購入した。われわれは彼らを何度も凝らしめなくて済むように、彼らを啓蒙している。そして、われわれは得た情報をもとに、上流のどこに問題があるのかを突き止める」と、同社のビジネス開発担当バスプレジデント、Adam Cohenは述べている。
あるメーカーは、Net Enforcersのおかげでグレイマーケットの問題が一部改善したと評価するいっぽうで、この業界には課題が山積みだと警告している。
「グレイマーケット業者は、顧客に不快な経験をさせることで、ブランドを傷つけ、業界に被害をもたらす」とKenwood USAのエレクトロニクス部門バイスプレジデント、Keith Lehmannは言う。「この標的は常に動き回っている。沈静化できるとしても、撲滅は不可能だろう。完全に止めることはできない」(Lehmann)
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