ネットの普及で複雑化する「グレイマーケット」対策 - (page 2)

Paul Festa (CNET News.com)2005年04月18日 17時31分

 グレイマーケットへの対応で先頭に立っているHPのような企業にとって、これは少しもありがたくもない話だ。HPは先ごろ、英国で開催されたある会合のスポンサーを務めた。グレイマーケットの問題と戦うために、2001年に結成された業界団体、Alliance for Gray Market and Counterfeit Abatement(AGMA)が開いたこの会合は、企業各社に対する啓蒙活動を行い、業界を挙げての対抗策に支持を集めるためのものだった。

 「インターネットの上では、グレイマーケットが爆発的に拡大している」と、AGMAバイスプレジデントのMarla Briscoeはいう。同氏はHPのブランド保護チームのメンバーでもある。「インターネットによって、ボーダーレスな流通システムが作られてしまい、違法な業者が製品を宣伝/購入/再販するのが非常に簡単になり、さらにメーカー側がこうした製品を誰が販売しているのかを正確に追求するのがいっそう困難になった。これは世界的な問題だ」(Briscoe)

 各メーカーにとってグレイマーケットに出回る商品の問題は、特に目新しいものではない。ニューヨークのキャナルストリートのような都会の商業地域には、通常の流通チャネルからはずれた安価な有名ブランド家電製品などを並べている小売店があることで以前からよく知られている。

 しかし、次第に洗練度を増す価格比較サイトをつかったオンラインでのバーゲン品探しが活発化し、いまではインターネット全体が巨大なキャナルストリートと化してしまっている。

 AGMAの委託によるKPMGの調査によると、IT業界は毎年、400億ドル程度の規模を持つグレイマーケットのために、50億ドルの損失を被っているという。この調査が行われた2年前から現在までに、この問題はさらに悪化したと観測筋は述べている。

 この市場で取り引きされる製品は、さまざまなチャネルを通じて入ってくる。そうしたチャネルのなかには違法性の低いものもあれば高いものもある。

 グレイマーケットの業者のなかには、HPなどの企業から不正に慈善事業や教育向けの割引価格で製品を購入し、市場価格以下でそれを転売している者がいる。また合法的な流通業者が仲間や友人らに在庫を違法に流し、それがグレイマーケットに転売されるといったケースもある。

 メーカー各社が、製品保障のためのサービスインフラを持たない国々で、製品を安価に販売しているのはよくあることだが、こうした製品のなかにはグレイマーケットを通じて米国内に還流し、格安な値段で販売されるものもある。

 グレイマーケットでは中古品や修理品が新品として売られていることもあり、またトラックから落下した商品が売られている場合もある。

 メーカーはグレイマーケットの存在によってマージンが奪われるばかりでなく、さらに腹立たしい問題を抱える可能性がある。

 あるメーカーが、広域サービスネットワークのないメキシコで製品保障を付けずに販売していたカメラを例にしよう。このカメラがキャナルストリートやeBay、あるいは無責任なインターネット商店に登場しても、購入者はその製品に保障が付いていないことに気づかないかもしれない。製品がうまく作動しない場合、メーカーは、仕入れ価格以下で売られた製品に存在しないはずの保障を提供するか、顧客との関係をぶち壊しにするかという2つの悪い選択肢に直面することになる。

 実際、グレイマーケットには修理された製品や中古品が非常に多いので、故障する可能性は高いと観測筋は言う。メーカーは、将来さらに高額の商品を購入しそうな顧客を失わないよう、本来90日しか保障がない、もしくは全く保障のない製品に1年間の保障サービスを提供することになる場合が多い。

 「パイオニアのような企業にとって、このような消費者の価値は高い」とNet EnforcersのLoomisは言う。「その消費者が3000ドルのテレビを買いに行ったらどうなるだろうか。各メーカーは、価格に含んではいなくとも、(グレイマーケットの)製品にサービスやサポートを提供しなければならない。『勝手にしろ』と言い放つには、消費者の価値は高すぎるのだ」(Loomis)

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