米国政府は海外のネット賭博の規制に取り組んでいるが、世界貿易機関(WTO)が7日、同政府による規制の一部が国際貿易協定違反にあたると認定したことから、同政府の取り組みはやや後退を余儀なくされた。
WTOの控訴審議会は、先に同機関の紛争解決委員会が下した判断の一部を支持する形で、東カリブ海の小さな島国であるアンティグア・バーブーダの主張の一部を認めた。同国にはネット賭博運営企業が多数存在し、現地の雇用の受け皿となっている。
国際自由貿易ルールを支持する一方で、ネット賭博関連規制の存続を熱望するBush政権は、WTOの今回の裁定により、両者のバランスをいかに取るかという厄介な政治的課題を抱えることになった。
そのプロセスを困難にしている原因は、WTOの裁定の複雑さにある。同裁定は、146ページ(PDFファイル)に上り、両陣営に勝利宣言を発表させるような内容だった。WTOの裁定委員会は、争点となっている法律の一部は「公衆道徳を守るために必要」であり、ルイジアナ、マサチューセッツ、サウスダコタ、ユタの各州の州法が貿易協定に違反しているか否かは検討しないと述べ、重要部分については米国の意見に同意した。
米司法省はネット賭博を違法と考えているにも関わらず、その人気はここ数年で急上昇した。会計検査院の調査によると、2003年のネット賭博業界の売上総額は42〜50億ドルと見られる。
アリゾナ大学で国際貿易法プログラムのディレクターを務めるDavid Gantzは、Bush政権はWTOが明確に勝敗をつけなかったのをいいことに、連邦ネット賭博規制法の修正をわずかにとどめるよう提案する可能性があると指摘した。
Bush政権は、規制法の修正を最小限にとどめることを示唆している。米国通商代表部(USTR)のPeter Allgeier次席代表は、「米国はネット賭博規制を今後も継続する」と述べ、さらに「(WTOの)審議報告書の意味するところは、すなわち、米国が特定の方法でインターネットギャンブル規制を明確にすれば何も問題ないということだ」と語った。
米テキサス州に拠点を置くMendel Blumenfeld法律事務所のパートナーで、アンティグアの主席弁護人を務めるMark Mendelは、米国が連邦規制法の改正を微修正にとどめる可能性を認め、クライアントのアンティグアは米国による規制法の修正が不十分な場合、「全体的なプロセス」を開始する用意があると語った。ただ同氏はその一方で、「われわれとしては、米国と交渉を行い、アンティグアのネット賭博事業者が米国の監視の下、米国内で制限付きのサービスを提供することで和解を図りたい」と語った。
アンティグアは2003年にWTOに提出した申立書の中で、ネット賭博を規制する連邦法および各州法は、米国が自由貿易協定の中で約束した義務に反する違法な貿易制限だと主張した。紛争解決委員会はアンティグア側の主張を認め、Bush政権は1月に控訴した。同政権はこれ以上の控訴は認められない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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