jigブラウザの登場、進化
jigブラウザをリリースしたのは2004年10月1日。当時はまだPCサイトが見られる端末はDDIポケット(現ウィルコム)の京セラ製端末「AH-K3001V」(通称:京ぽん)しかなかった。KDDIがOperaを搭載したau端末「W21CA」を発表したのはそれから約2週間後のことだ。「jigブラウザのリリースがW21CAの発表直前だったのは偶然」と福野氏は話すが、KDDIが受けた衝撃は想像に難くない。
jigブラウザを使ってCNET Japanのトップページを表示した様子。PCから見たときと同じレイアウトで表示される |
しかもW21CAではPC用サイトの閲覧にかかる通信料は従量課金であるのに対し、jigブラウザの通信料はDDIのAH-K3001Vと同様に定額制が適用される。このため、リリース直後からアクセスが殺到し、最初はなかなかアクセスがつながらないこともあった。
当初の対応端末はNTTドコモのFOMA900iシリーズ以上と、KDDIのEZアプリ(Java)Phase3対応端末のみだったが、2005年3月1日にはmova 505iシリーズおよびFOMA 700iシリーズに対応。そしてjigブラウザ非対応端末でも端末に搭載されたブラウザを使ってPCサイトが見られるサービス「jigブラウザWEB」を3月4日にリリースした。これにより、auのBREW端末やボーダフォンの端末からでもPCサイトが見られるようになっている。
jigブラウザWEBは、jigブラウザに対応していない端末のユーザーを主な対象としている。jigブラウザはボーダフォンのVアプリやauのBREW版EZアプリに対応していないからだ。
ボーダフォンはブラウザアプリ自体を規約で禁止している。また、auのBREW版EZアプリは、KDDIに申請して認可を得てからでないとリリースできない。福野氏によれば、KDDI側からは「EZwebサイトの利用を圧迫する可能性があるという理由で許可が下りなかった」という。つまり、定額制を利用して大量のデータをやりとりされると、ほかのEZwebサイトを利用するユーザーの伝送速度が遅くなったり、つながらなくなったりする可能性があるので許可できないということだ。
これは推測だが、フルブラウザは既存の公式コンテンツプロバイダがこれまで築いてきた「月額数百円で携帯電話用サイトの利用を許可する」というビジネスモデルを壊す可能性があり、KDDIとしては公式コンテンツとしてのお墨付きを与えることはできなかったという理由も考えられる。
jigブラウザWEBはフルブラウザ世界の「入り口」
こちらはjigブラウザWEBを使ってCNET Japanのトップページを表示した様子。携帯電話の画面の幅に合わせてレイアウトが折り返される |
jigブラウザWEBはjigブラウザの機能のうち、「PCサイトを携帯電話で見る」という機能に特化したサービスと言っていい。携帯端末に標準搭載されているブラウザを利用してPCサイトを閲覧する。利用者はまず、jigブラウザWEBにアクセスし、ログインを行う。それぞれのPCサイトのページはjig.jpのサーバで携帯電話用に適したHTMLに変換され、端末に合わせて分割表示されるという仕組みだ。
jigブラウザのようにPCサイトのページ全体を表示する機能はない。また、端末に標準で搭載されているブラウザを利用するため、データの圧縮量には限界がある。jigブラウザと異なり、ユーザーが細かいカスタマイズをすることもできない。
利用料金は月額525円または年間一括で3000円。jigブラウザの利用料金の半額だ。かなり戦略的な値付けともとれるが、福野氏は「開発にかかったコストが決め手になった」と話す。
jigブラウザはリリース以来、ユーザーの要望を数多く吸い上げてバージョンアップを繰り返し、さまざまな機能が盛り込まれている。また、操作性も直感的に分かりやすい形になっている。これに対して、jigブラウザWEBは機能をPCサイト表示に絞っており、操作性は携帯電話の端末に依存している。例えば各ページのお気に入り登録や、画像表示の有無は端末の設定を操作する必要があるのだ。
「jigブラウザWEBはユーザーに(操作性や機能などを)妥協して使ってもらう必要があるので、その分料金を安くしている。ただ、端末の操作に慣れている人は同じ使用感で使ってもらえるというメリットはある」(福野氏)。jigブラウザWEBはjigブラウザの世界の入り口として、フルブラウザの世界を体験してもらうきっかけと考えているようだ。
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