早く家に帰ろう--「時短」が進む米ソフトウェア業界 - (page 2)

余った時間はオープンソースに

 実際、政府の統計では、米国の業界全体でソフトウェア専門家の労働時間減少が明らかになっている。ソフトウェア開発、通信、コンピュータシステム設計といった業界で働くコンピュータのソフトウェアエンジニアは、2003年には本来の仕事に平均42時間従事していたが、昨年はこれが41.5時間とやや短くなっている。一方で、米国のあらゆる職業を含めた平均週間労働時間は、昨年も以前と変わらず38.3時間だった。

 ただし、プログラマのなかには、本業以外の目的でコンピュータの前で過ごす時間が増えている者もいる。最近の多くのエンジニアは、友人や親戚からコンピュータに関する質問を受け取ることが多いというのも理由の1つだ。ほかにも、オープンソースソフトウェアのコミュニティが活況で、配布や修正が自由に行えるプログラムの開発に参加するプログラマもいる、との理由もある。

 Linuxのようなオープンソースソフトウェアは商業的にも大成功を収めており、自分の本業の一環として取り組む技術専門家もいる。しかし、技術者の多くは、このようなプロジェクトにボランティアで参加しており、およそ週1日をそうした作業にあてているという。

 ソフトウェア企業の勤務時間が短くなっているため、技術者がオープンソースプログラムの開発に時間を使いやすくなっている。一方、ゲームソフト会社のなかにも過酷なスケジュールの改善に取り組んでいるところはある。

 Firaxis Games(本社:メリーランド州ハントバレー)の従業員も、プロジェクトの完成に向けて残業することは時折ある。だが、同社CEOのJeff Briggsは、従業員に週40時間以上の労働を求めていないという。

 「最高のゲームを開発するには、楽しめる状態でなくてはならない。四六時中切羽詰まった状況であってはならない」(Briggs)

 Silicon Valley Association of Startup Entrepreneurs会長のLaura Rodenによると、誕生間もないソフトウェアメーカーや他の新興企業でも、より成熟した、能力の高い経営陣が指揮をとるようになったことなどから、数年前のように職場が躁状態になる可能性は低いという。

 「駐車場が一晩中ふさがっていることはなくなった。オフィスで夜を明かす人もいなくなった」(Roden)

過大評価される時間外労働

 長時間労働が必ずしも大きな成果につながらないことを指摘する調査結果も出されいる。コンサルタントのDeMarcoは、生産性に関するデータを調査した結果、週44時間労働の従業員も、36〜37時間労働の従業員も成果が変わらないことを発見した。

 「残業をしても得るものはない」(DeMarco)

 DeMarcoの主張では、適度な休憩を取らずにこなせる作業量には限度があり、残業をしがちな企業は、どちらかと言えば会議の運営方法に問題があるという。

 Fog Creek創業者のJoel Spolskyにとって、DeMarcoの論理は完全に筋の通ったものだ。Fog Creekの5人の正社員が週40時間以上勤務することはめったにない、とSpolskyは語っている。勤務時間がこのように普通であるにもかからず--というか、むしろそのために、同社の売上高は5年前の創業時から毎年倍増以上の伸びを示してきている。

 Spolskyは、ソフトウェア開発者に長期にわたって長時間労働を強いると、会社の損害となる「負の労働時間」につながる危険があるとの見方をしている。

 「生産性が低下し、ミスを犯し始める。疲れが原因だ」(Spolsky)

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