同氏は、発表から40年たった論文を読み返してみて、いくつか驚きがあったことを認め、その1つとして同氏がホームコンピュータの出現を予想していたことを挙げた。
Mooreは、Intelが何年も前に腕時計の開発に挑んだが成功しなかったことに触れ、「私はあの論文のなかで電子時計についても記していた。Intelでも一度電子時計の開発に取り組んだことがあったが、残念ながら失敗に終わった」と苦笑した。
同氏はまた、コンピュータ科学者のCarver Meadが「ムーアの法則」の名付け親であるとし、このたいそうな呼び名に慣れるまでにおよそ20年もかかったと述べた。
そのほか、Mooreは次のような話題にも触れた。
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同氏は、Intelが個別のチップ開発から、プラットフォームの構築に戦略を転換したことを評価した。「Intelが先に行った組織再編は、ある意味で次期CEOのPaul Otelliniが望む姿を反映したものといえる。この組織再編はとても適切なものだと思う」と同氏は述べ、さらに「Intelで、技術系の博士号も持たず科学者でもない人間がCEOになるのはPaulが初めてで、その点が歴代のCEOとは異なるが、現在のチップ市場に限れば私よりもずっと技術に明るい」と付け加えた。
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トランジスタの発明者であるWilliam Shockleyは、シリコンバレーの形成に一役買ったが、それはMooreやRobert Noyce(Intel共同創業者)、Eugene Kleiner(著名VC、Kleiner Parkins共同創業者)ら、Shockley Semiconductorで働いていた「8人の裏切り者(traitorous eight)」をギリギリまで追いつめたからだった。
「Shockleyは非常に優れた物理学者だったが、他の人間と働くことについてはとても変わった考えの持ち主だった」とMooreは言う。「それでも私とは結構うまくいっていた。私が化学者であったため、こちらの知っていることをすべて知らなくては気が済まないと彼が感じなかったからだ」(Moore)
8人のエンジニアは、同社の資金提供者のもとを訪ね、Shockleyを経営陣から外すように求めた。しかし、この要求は土壇場になってはねつけられた。この時、Kleinerの父親の知り合いだったArthur Rockという投資銀行家が力を貸し、8人はFairchild Semiconductorを創業した。
「Fairchildは、どんな目的に使うかなどお構いなしに、次々に技術開発を進めていった」とMooreは言う。ところが、Fairchildもまた経営面で混乱状態に陥ったため、MooreとNoyceはIntelを創業し、また他のメンバーもそれぞれ新しい会社を始めることになった。
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コンピュータが現在のような仕組みで動いている限り、人間の思考方法を真似ることは決してない。「人間の知性は、John von Neumannが考えたコンピュータとは劇的に異なる形で働いているというのが私の見方だ」と同氏は述べ、「脳のプロセスはかなり並列的に情報を処理し、また比較的いい加減だが、それが理にかなっている」とした。
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中国は米国にとってますます大きな存在になる。「中国の影響はこれからもっと大きくなっていく。中国のほうが技術系の学生の数が10倍も多い。シリコンバレーは依然として会社を始めるには最高の場所だが、特に住宅費をはじめとして、コストがかかりすぎる」
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コンピュータ業界の進歩の速度がスローダウンし、チップ上のトランジスタの数が倍増するのに3〜4年かかるようになるかもしれない。ただし、この業界はこれまで障害に出会うと必ずそれを乗り越えてきている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。