テキサス州ヒューストンで今月初め、両親をピストルで撃たれた17歳の少女が、あわてて911番(米国の緊急電話番号)に通報した。だが、電話は警察につながらなかった。
それどころか、受話器からは、911サービスが利用できないことを伝える録音メッセージが聞こえてきた。一家は先ごろ、インターネット電話サービスに加入したばかりだった。彼女は、何とかその場を脱け出し、911番につながる電話を利用して警察と救急車を呼ぶことができた。
カリフォルニア州サンノゼで開催中の「Spring 2005 VON Conference & Expo」(VONカンファレンス)に参加した企業幹部らは、この悪夢のような事件について、インターネット電話サービスから911番通報ができないケースが多々あることを改めて浮き彫りにするものだ、と口を揃える。インターネット電話サービスプロバイダは、VoIPサービスを提供する事業者のこと。従来の電話サービスは、通話料がかさむ上に高い税金が課される。それに対し、VoIPは、規制のかからないインターネットを利用することで通話を実現するため、通話料が安い。米国の場合、既存の電話網は「Baby Bells」と呼ばれるベル系の地域電話会社4社によって独占されており、911サービスもこの4社から提供されている。米国のインターネット電話会社の多くがいまだに、緊急電話のルーティングをうまく行えずいる。また、通報者の電話番号や位置情報を特定する仕組みが確立されていない場合も多い。
だが、進歩も見られる。ベル系の地域電話会社各社はインターネット電話サービスプロバイダにかつてないほどの歩み寄りを見せている。電話会社各社は、自分たちの緊急電話用インフラにインターネット電話サービスプロバイダが直接アクセスすることを認める姿勢を見せ始めている。IP電話からの緊急通報を実現するための最大の障害が取り除かれる。
VONカンファレンスでは、緊急電話に関する有望な新サービスもいくつか発表される予定だ。おそらく最も注目すべきは、Intradoの新サービスである。Intradoは、既存の電話会社にも911サービス用ソリューションを提供する大手プロバイダだ。Intradoは今回、VoIP事業者向けのパッケージサービスを開発したという。
緊急通話は長い間、IP電話における課題とされてきた。実現を難しくしているのは、IP電話で使用されている技術だ。VoIP通話では、音声データがパケット化され、IP網を通じて音声が送信される。このように音声データが(既存の電話網でなく)インターネットを経由することから、VoIP通話はBaby Bells(Qwest Communications、SBC、Verizon Communications、BellSouth)やその他の電話会社が従わなければならない連邦や州の規制の対象とならず、通話料の低価格化が実現されている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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