一部のインターネット電話サービスプロバイダは、ネット上での通話を傍受させるよう求めている警察に協力したいと考えているが、技術的な制約からできない状況にあるという。
VoIP(Voice over Internet Protocol)プロバイダ、Free World Dialupの創設者であるJeff Pulverは13日(米国時間)、同社が提供するサービスへの加入者の会話を傍受するよう捜査当局から要請があった場合には、実際に可能かどうかを見極めるため「数カ月間の科学プロジェクト」を実施する必要があるだろう、と語った。
一方、同じく無料インターネット電話サービスのSkypeの創始者、Niklas Zennstromは、困難とされるインターネット電話の会話傍受が仮に可能だとしても、データビットは暗号化されているため、警察は全く訳の分からない雑音しか聞き取れないだろう、と語った。
米連邦通信委員会(FCC)は12日、インターネット電話サービスプロバイダが法律で保証された警察による会話傍受を可能にするため、政府の規格に合わせてネットワークを再構築すべきか否かを吟味する採決を行った。しかしFCCは、その後ある問題に直面しており、Free World DialupとSkypeの両プロバイダはその最たる例といえる。
加入者に関する情報について、可能なものならどんなものでも出そうというVoIPプロバイダが多いが、そんな彼らにも警察が本当に欲している情報、すなわち加入者らの会話内容を確実に入手することは不可能というのが実情だ。一回の音声会話に相当する情報量は数百万ビットに及び、それらを全て収集するのは困難である。また、インターネット上の音声会話と数テラビットもの他のデータを区別する標準化された方法が存在しないことも、インターネット上の会話の傍受を困難にしている。
この問題は、FWDやSkypeといった、コンピュータ間でのみ通話可能なインターネット電話サービスを提供するプロバイダから、Vonageや8x8などの一般の電話とも通話可能なサービスを提供している企業まで、幅広いVoIPプロバイダに影響を与えている。これらのVoIPサービスプロバイダの多くは、自社サービスを利用した通話の大部分は従来の電話網を介しておらず、その結果、会話内容の傍受は不可能だとしている。
「おそらく数年後には(会話の傍受も)可能になるだろうが、現時点では無理」(Pulver)
FCCが現在検討している1つの解決案は、インターネット電話をかける上で必要な高速インターネット接続を提供しているインターネットサービスプロバイダ(ISP)に、会話の傍受を義務付けるというものだ。しかしISP側も、VoIPサービス企業とほぼ同じ理由で、会話の傍受は困難だろうと予測する。Verizon Communicationsの広報担当、Larry Plumbは「我々も市民であり、テロリストたちに我々のネットワークを利用されたくない」と語った。
SkypeのZennstromによれば、通話が従来の電話網を使ったものから、Internetに移行していくのにあわせて、会話の傍受を認める法律を書き換える必要があるという。1994年に立法化したCommunications Assistance for Law Enforcement Act (CALEA)は、電話サービスプロバイダが電話網を所有している時代に定められたもので、いまではまったく事情が異なっていると、Zennstromは説明する。現在電話サービスを売り込むのに必要なのは、ネットからダウンロード可能なソフトウェアだけだ。
「昔は、警察が地元の電話会社に出向いて、傍受を求めれば、それで用が足りた。だが、インターネットの普及した時代には、それほど簡単にはことは進まない」(Zennstrom)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス