Googleで、株式売却の報告を義務付ける証券法が幹部や株主だけでなく、数百人の社員にまで適用されるという滅多にない事態が起こり、これが大学の仲良しクラブ的なイメージがある同社の社内で人間関係に悪影響を及ぼしている。
昨年8月にIPOを実施したGoogleは、創業者のSergey BrinやLarry Pageから一般社員に至るまで全員の株式売却について、その詳細を説明する書類を証券取引委員会(SEC)に提出した。この情報開示は、これまでに同社社員3000人のうち約400人に影響を与えており、わずか5株の取引で850ドルを手にしたというものまで含まれている(株式売却の予定についてはYahooのファイナンスセクションで見ることができる)。
Googleの気前のよい株式譲渡方針により、少なくとも書類上は約1000人の億万長者が新たに誕生したが、この方針に対して社員からの苦情はあまり出ていない。しかし、SECへの提出書類によって同僚の資産が異例なほど赤裸々に公開されたため、社内の雰囲気がギスギスしたものになってしまい、社外に対しては大学のクラブのような分け隔てのないイメージを打ち出している職場にこれまでなかった緊張が生まれている、との声も聞こえてくる。
同社の内情に詳しいある人物は、「100万ドルの資産を持つ人間と、ほとんど一文無しの人間が、そのことをお互いに知りながら机を並べているような状況は尋常ではない。一部には、自分が他人より偉く感じるようなひずみが生まれている」と語った。
Googleは理想にあふれ、世界を巨大なデジタル図書館に変えるという表面上は利他的な目標を掲げているが、その同社は今、瞬く間に富を得た社員と社内情報の氾濫とが交錯する不快な状況のなかで格闘している。
Googleはこの件に関してコメントしていない。しかし、証券法を専門にする弁護士の話では、株式売却の情報開示は、公募外での証券売買に関するSECの規定に従ったものだという。
通常、SECへの自己取引の申告義務があるのは会社の執行役員や取締役だけで、大半の社員は匿名による自己保有株売買が認められている。
しかし、GoogleのIPOでは、従業員が公募前に異例に大量の株式を購入したことから、この通則があてはまらない。節税のメリットを享受するため、数百人の社員がIPOを待たずに、自己保有株式を公募前の相対売買で即金購入する判断を下したのだ。その結果、公募開始時にオプションではなく私募株式を保有することとなり、インサイダーとして自らの株式売却を報告する義務が発生した。
証券法を専門にする弁護士によると、企業は一定範囲内に限り701規定と呼ばれる免除を受け、一般的には私募株式の売却報告義務を回避できるという。ただし、企業がこの免除を受けるには、100万ドル相当、資産総額の15%、あるいは12カ月以内に発行済みの株式の15%の上限を超える株式を売却することはできない。
Cooley Godward法律事務所の証券法担当主任弁護士Mark Tanouryは、「Googleは701の制限を大きく超えてしまった」と述べている。
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