「エンタープライズ」「コンシューマ」の区別は時代遅れ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 大手IT企業各社がしのぎを削る次なる戦いの舞台はどこになるとお思いだろうか。それは他でもない、あなたの自宅である。

 Microsoftやライバル各社は、デジタルエンターテインメント、ゲーム、検索、オンラインミュージックといった、現在大きな注目を集めるコンシューマ向け事業に、新規に顧客を開拓し、利益を上げ、業界のマインドシェアを獲得する最も優れた機会を見いだしている。

 確かに、Microsoftが企業顧客から得ている売上は、相変わらず全体の80%近くに上る。しかし、エンタープライズ市場の成長は鈍化しており、ビジネスソフトなど一部の分野では実際に整理統合が進んでいる。

 対照的に、デジタルビデオレコーダや、iPodに代表される携帯音楽プレイヤーなどのコンシューマ市場は活況を呈しており、また企業ではなく個人ユーザーが最高性能のハードウェアを購入するようにもなっている。コンシューマ市場はソフトウェア企業にとって魅力的な市場である。Bill GatesもMicrosoftが金融アナリスト向けに開いた会議でそのことを認めており、「新しい動きは、ビジネス分野よりもコンシューマ分野のほうが速い」と語っていた。

 先頃開催されたConsumer Electronic Show(CES)でGatesが口火を切る基調講演を行った理由もそこにある。この講演のなかで同氏は、TiVo、MTV Networks、Discovery Channelといったコンシューマ市場の主要企業との提携を盛んに宣伝していた。少し前なら、最高のネタはComdex(既に消滅したIT専門のトレードショー)用にとっておいただろう。

 CESを利用したMicrosoftのマーケティングは、1990年代半ばから紆余曲折を経て現在に至っている。Bill GatesがCESを使って発表した初期の製品のなかには、あのMicrosoft Bobのような革新的製品もあった。

 現在彼はCESを使って、Windows XP Media CenterやXboxといったMicrosoftの戦略の基盤となる製品や、重要なパートナー企業との提携を売り込んでいる。

 しかし、彼の言葉を鵜呑みにしてはいけない。Sun Microsystemsは、決してコンシューマ市場に精通した企業ではないものの、消費者の持つ力の大きさを見直しつつある。同社COOのJonathan Schwartzは、「IT業界の中心的なパワーは、エンタープライズから若い消費者の手に移ろうとしている」と指摘する。

 Schwartzなどの主張によると、ITに関する購入の意志決定はもはや企業のIT部門で働く人間だけが下すものではなくなっているという。個人が自宅で使うテクノロジー、彼らが使っていて最も心地よいテクノロジーが、会社で使いたいと思うテクノロジーの購入に関して非常に大きな影響を及ぼしている。使いやすいソフトウェアやモバイル機器などはその最たる例だ。「個人が仕事場に持ち込むようなテクノロジーを開発することが重要だ。こうしたテクノロジーはわが社のビジネスの重要な牽引役となる」(Schwartz )

 従来のIT市場の分類はあいまいになってきている。IBM、Microsoft、Intel、Hewlett-Packard(HP)といった各企業では、もはや明確な形で顧客を「エンタープライズ」もしくは「コンシューマ」に分類することはない。多くの点で、これらの顧客ベースは同一のものといえる。ボーイングのCIOはIBMのサーバを購入するかもしれないが、同時にiPodユーザでもある。Windowsを5万台分購入したあるIT部門の部長が、MSNを潜在的な顧客を見つけるためのパイプと考えていることもあるだろう。

 大手IT企業は、過去1年間にわたって、こうした傾向が強まるのを目の当たりにしてきた。Microsoftは大企業顧客から膨大な利益を上げているが、Bill Gatesは、エンタープライズ市場で新規の顧客を獲得するには消費者のマインドシェア獲得が重要であることを理解している。

 IT企業の間でコンシューマ市場が注目されていることは、製品とサービスのマーケティング方法に関する大きな変化とうまく符号する。これを説明する最新の考え方は「Long Tail」理論と呼ばれるもので、最初はWiredの記事として発表されたが、今ではブログになっている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加