U2のボーカルを務めるBonoは、先月開催されたApple ComputerのiPod発表パーティーに出席した。トレードマークのサングラスをかけ、独特の歩き方でステージに上がったBonoは、Appleや同社の音楽関連製品に賛辞を贈った。
トップアーティストとの独占販売契約を巡って激しい競争を繰り広げるオンライン音楽ビジネス界において、U2とのパートナーシップは無類の成功だった。Appleは、U2のアルバムリリース前にアルバムからのシングル曲をiPodのコマーシャルで使うことを許可されたほか、U2ブランドの音楽プレイヤーを販売することも認められた。また、同社は、U2の最新のシングル曲とアルバムをオンラインで販売している。BonoとギタリストのDavid“The Edge”Evansは、発表会で、自分たちの曲を何曲か披露するほどのサービスぶりだった。
Edgeはステージ上で、なぜミュージシャンたちがAppleやそのライバルオンライン音楽企業に対し、かつてないほど歩み寄りの姿勢を見せているのか、自らの考えを語った。
Edgeは「最初にNapsterが出た時は、どんなことが実現できるか大いに期待した。しかし、その後、Napsterが音楽ビジネスを間違った方向に導くかもしれないと考えるようになった」と述べ、iTunesストアで適切な対応を取ったAppleを称賛した。
「コンピュータを使って音楽を保存したり再生したりする人が増えている。われわれに楽曲の対価が支払われる方法さえ確立されれば、この傾向は業界を良い方向に導いてくれるだろう」(Edge)
このようにミュージシャンたちの心の中では、理想主義、懸念、名声への渇望といった複雑な気持ちが交錯している、そしてこのことが、登場間もないオンライン音楽サービスと音楽業界と間の心地よい関係を育んでいる。今後数年のオンライン音楽業界のあり方が形作られてきた、と業界関係者は語る。
ただし両者の関係は今のところ、金銭的なやりとりがされるまでには至っていない。オンラインサービス企業は、独占コンテンツの入手に躍起になっており、アーティストの広告や販促費用まで負担してしまっている。オンラインサービス企業各社は、音楽市場をコントロールするほどの力を持っていないのが実状だ。
今日繰り広げられるオンライン顧客争奪戦の勝者は、大きな役割を担うことになる。ダウンロード音楽界のAmazon.comが現れれば、オンライン業界にも「ペイ・フォー・プレイスメント(掲載コンテンツ毎の課金)」のビジネスモデルが根付くだろう。
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