多くのIT関連企業の株価が長期下落傾向から脱し切れない状態のなかで、トレンドマイクロの株価が今年5月中旬以降一貫して下値切り上げパターンの上昇トレンドを継続している。先週末の5日には5460円の高値まで買われ年初来高値を更新し続けている。同社の強さの背景を探った。
トレンドマイクロの2004年12月期第3四半期(7〜9月期)の連結業績は、売上高158億5000万円(前年同期比28%増、中間決算発表時の会社計画比5.7%増)、営業利益が67億9500万円(同66%増、同23.5%増)と好調な推移をみせた。
この好調な業績の背景として、インターネット環境の普及にともない、今年に入ってコンピュータウイルスの届け出件数が一段と増加していることがある。IPA(情報処理推進機構)によると、月ごとに多少のバラつきはあるものの、今年のコンピュータウイルスの発生件数は昨年に比べて約3倍程度の大幅増加での推移となっている。最近の四半期ごとの売上高推移の伸び率を前年同期との比較でみると、前期の2003年12月期の第2四半期が5.9%増に止まっていたものの、今期に入って、第1四半期が24.8%増、第2四半期が30.3%増、第3四半期が27.9%増と非常に高い増収率をキープしている。
新光証券では、11月2日でに発表したリポートで「来期以降はネットワーク製品の期待度が高い」とし、レーティング(株価判断)を新規に「2+(やや強気)」でカバーをスタートした。同証券では今12月期の第4四半期の業績は会社計画を上回る着地を予想しており「来期以降の成長ドライバは、ネットワーク製品が考えられる。一方、
--などがリスクファクターとして考えられる」と指摘している。
また、外国証券のアナリストからは「確かに、トレンドマイクロの業績推移は順調で、新製品による業績飛躍オプションもある。しかし、最近のセクター全体の株価調整に対し、同社の株価は好業績も作用して、相対的な割高感が生じている。したがってここからの短期間での大きな株価の上昇は見込みにくい」との厳しい見方もある。
トレンドマイクロの株価は、今年5月前半にIT関連銘柄全般が一斉に急落するなかで連動して下落したものの、5月17日には3380円で底をつけて反転上昇トレンドとなった。その後は26週の移動平均線を支持線として、順調に下値を切り上げながら一貫して上昇をみせ、直近までの約半年間に60%と大幅な上昇をみせている。確かに、現在会社側が公表している今期の予想1株当たり利益100円で試算したPERは50倍を超え、かなりの割高水準にあるといえる。しかし、一方では10月29日申し込み現在の信用取引の残高は、買い残高30万2000株、売り残高89万7000株で、信用倍率は0.33倍と大きな売り残高超過となっている。売り残は将来の潜在的な買い需要となるため、株価の上昇にとっては上昇への支援材料となりそうだ。
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