私がInternet Explorerを捨てた理由 - (page 2)

 マイクロソフトの幹部らが自社の技術力に心酔しきっていることにはいつも驚かされる。研究開発費に80億ドル近くも投じていれば、マイクロソフトのラボで開発される大半の製品はすばらしい出来であるはずだと思うのだろう。だとしたら、ブラウザ戦争の後、Internet Explorerが実質的に何も進化していないのは、なぜなのか。

 この問いに対して、マイクロソフトは即座にこう答える。1つはセキュリティである。

 「顧客は、我々に対して、セキュリティ以外の変更点を最小限に抑え、セキュリティ関連のパッチが問題なく適用できるようになることを望んでいる」と、マイクロソフトWindows部門のセキュリティ製品管理を統括するGary Schareは言う。

 セキュリティでなければ、Longhornである。

「もちろん、ブラウザの技術革新は我々にとって優先度の高い重要事項だ」とSchareは言い、さらに同社ではLonghornのリリースに合わせて、これを実現させる計画だ」と語った。

 マイクロソフト前社長も言っていたが、これについては私にも言わせてほしい。

 何事にも懐疑的で知られている私としては、もう少しだけ待てば、ユーザがLonghornで素晴らしく豊かなウェブエクスペリエンスを享受できるようになる、などと信じることはとてもできない。Longhornは既にリリースが遅れているが、私は、正式リリースは早くても2006年あたりまでずれ込むのではないかと見ている。そして、それまでにマイクロソフトが開発速度を上げて優れたブラウザをリリースすることができない理由については、まったくの謎である。

 セキュリティ対策では、マイクロソフトは明らかに手一杯の状態だ。WindowsとInternet Explorerに存在する無数のセキュリティホールを埋めるのは容易なことではない。しかし、だからといってブラウザに気の利いた改良を施すことができない理由にはならない。たとえば、Firefoxのような、RSSフィードからコンテンツを動的に更新する機能を追加することがなぜできないのか。そう考えてみても、私にはまったくわからない。

 マイクロソフトは、ウェブデザイナーにとってますます重要度を増している、CSS(カスケーディングスタイルシート)のサポートを強化することで、多くの開発者を手助けすることだってできる。マイクロソフトの擁護者らは、Internet Explorerには最初からCSSのサポート機能がきちんと実装されていたが、その後標準に大きな変更があったため、同社が苦境に立たされることになったのだと主張している。彼らの説明によれば、初期の実装を下手にいじると、何万というウェブサイトをめちゃくちゃにしてしまう可能性があるという。

 マイクロソフトは公に認めたことはないが、本当の理由は、同社を本気にさせるような本物のライバル製品が存在しないということだ。Netscapeがブラウザ市場の主役から降りてしまったことは、Internet Explorerにとって最悪の出来事だった。そのせいで、マイクロソフトはブラウザの開発ペースを落としてしまえたからだ。

 マイクロソフトは、OS市場は言うに及ばず、ブラウザ市場でも90%以上のシェアを占めており、それによって大きな競争優位を確保している。しかし、Firefox、Safari、Operaなどの登場で、久しぶりにブラウザ市場のシェアを、まだわずか数パーセントではあるが、失いつつある。Googleも近い将来、この市場に参入してくるかもしれない。

 これはマイクロソフト帝国全体からすればささいなことかもしれない。もちろんマイクロソフトが本命であることに変わりはないが、私と同じように、現状にうんざりするユーザがどんどん増えていくような予感がする。

筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者

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