ネットがともしたキャンドルナイト - 石元龍太郎氏

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 2004年の6月19日から21日夏至にかけて行われたイベント「100万人のキャンドルナイト」は今年で2回目を迎えている。キャンドルナイトのネットでの盛り上がりを支えたSFCの学生がいた。その舞台裏に迫るべく、石元龍太郎氏にお話を伺った。

1000000人のキャンドルナイト
 現在、環境情報学部4年生の石元龍太郎氏は2003年に行われた初回の「1000000人のキャンドルナイト」から、インターネット上でのキャンペーン作りを担当している。まずキャンドルナイトについて簡単に説明してくれた。「キャンドルナイトとはアメリカでエネルギー政策に反対するための自主提言の方法として始まったのがきっかけで、電気を消してろうそくの火をともそうという活動。そういうことをやりたい、という日本の環境NGOが昨年からスタートさせた」(石元氏)。誰にでも参加できて楽しめるようなものにしたい、皆に愛されるキャンペーンにしたい。そんな意向から、「100万人のキャンドルナイト」というタイトルや“でんきを消して、スローな夜を。”というブランディングがなされたのだそうだ。

 2003年夏至の「1000000人のキャンドルナイト」では6月22日の夜8時から10時の2時間、「みんなでいっせいに電気を消そう」という呼びかけを中心に、普段ライトアップしている場所に協力してもらってライトを消したり(ライトダウン)、全国各地で自主的にキャンドルナイトのイベントが開催されるなど、全国でろうそくを囲んだ盛り上がりを見せた。

キャンドルナイトの模様

 「1カ所に集まるイベントだったら、武道館や東京ドームでやれば目に見えて人が集まっている様子がわかるから一体感がある。しかし皆に愛されるキャンペーンにするなら、全国規模でもっと様々な参加の仕方が必要だし、1カ所に100万人を集めるというのはなかなか難しい。となると分散して参加してもらうことになる。ではどうやって同じ時間を共有する一体感や、大きなムーヴメントに参加しているという実感が得られるようにするか。これは難しいことだったが、実現しなければならないことでもあった」(石元氏)

 イベントやキャンペーンの場合、広報や告知は様々な手段で行うことは既存のメディアでも大いに可能だった。しかし分散した参加者に、参加意識や同じ時間を共有する一体感を感じさせるためには、プッシュ型メディアでは能力が足りないと指摘する。「受け身のメディアよりも、一人一人にコミットを求めることができるメディアを使った方が効果がある。また本当に一緒にやるというお互いの宣言が見られる方がいいし、真実を見せる必要がある。プッシュ型に限らないインターネットというメディアが重要な役割を果たすのではないかと考えた」(石元氏)

 初めのうち、環境NGOの人たちは「とりあえずやってみて下さい」とネットを使ったキャンペーン・メイクを任せてくれたそうだ。「1カ月くらいは暗かったですね、反応が薄くて。もしかしたらうまくいくかもしれないという期待感で続けていたところ、反応が返ってくるようになった。次第に加速度的に反応が増えていき、やっている側のスタッフはみんな感動して、モチベーションがものすごく上がった」(石元氏)。

 ネットを活用し2003年に成功したという要因をこう振り返る。「マスコミはとても懐疑的だった。本当にやるのか?という対応がほとんどだった。しかし2週間で急激に盛り上がっている様子を見せることができた。参加者が参加者を呼ぶような2週間。2003年は原子力発電所が止まっていて、夏に電気が足りないかもしれない、という危機感があった。節電に目を向けてもらうことは緊急性の高い話題になった。メーリングリストなどでも2週間という期間に絞って告知を流してもらうようにしたが、ネットでの情報流通は緊急性に最も良い対応をしていると考えていて、それが的中した」(石元氏)

 双方向性の確保や緊急性のある情報との親和性を生かした格好になったキャンドルナイト。インターネットを使うにあたり、いくつかの目玉となるコンテンツを用意している。その一つが「キャンドルスコープ」である。これはインターネット上から郵便番号を含めて参加表明の登録をすると、同時に日本地図の上に明かりがともるというFlashコンテンツだ。これは中村勇吾さんが作ったもの。日本でどれだけの人が、どこで参加するのか、自分が参加したことでどこに光がともったのがわかる仕掛けになっている。

キャンドルスコープ

 「実は、登録してもらってメールを返すときにも工夫している」と石元氏は言う。「郵便番号を元にして、その人の前に登録した人の地域からキャンドルリレーがなされた、ということにした。例えば東京都千代田区で登録した人は“あなたは○○人目の登録です。熊本県八代市からリレーされました”というメールをもらうことになる。そうやってろうそくの火が移っていく感覚を表現している。ネットを活用するに当たって感覚を大切にするようにした。このことを僕らでは“フィール”と呼んでいる」(石元氏)

 キャンドルスコープに留まらない。「ウェブサイトでロゴマークを配布したり、キャンドルナイトの名前でイベントを開催しても良い、とイベントを自由に共有する仕組みをネットを通じてつないだ。キャンドルナイトのウェブサイトにイベント登録や相互リンクをする形で、参加者が参加者を呼ぶイベントスタイルを作っていった。札幌では行政とNPOがキャンドルナイトを接着剤代わりにして一緒にイベントを行ったり、環境省とNPOがジョイントしたりという、今まであまり行われていなかった珍しい動きのアシストもしていた」(石元氏)。インターネットを使ったキャンドルナイトは、個人対個人、友人グループ、市民、行政など、様々なレベルでのコミュニケーションの場を作っていったことになる。

 2年目となる2004年はBlogとソーシャルネットワーキングも活用したそうだ。「Blogについては僕らもびっくりしていたんですが、自分たちとつながりのなかった人たちが“10万人のブロッガーズキャンドルナイト”というBlogをはじめて、たくさんのブロガーをを集めていたんです。キャンドルスコープに流れ星が流れるようになるなどの細かいヴァージョンアップしたところ、その解説までなされるなど、ものすごく細かく僕らの動きをチェックしている。Blogのコメントやトラックバックは、その人らの周りの人たちも見ることになって、ものすごく告知効果が高いことに驚かされた」(石元氏)

 またソーシャルネットワーキングサービスGREEでは“100万人のキャンドルナイト”というイベントを擬人化して登場させて、いろいろな人にリンクしてもらっている(後に、これは禁止行為ということになったそうだ)。「いたずらで福沢諭吉や小泉首相がGREEに登場しているじゃないですか、あれがヒントです。怒られるなーとは思っていましたが。すぐにたくさんのリンクが集まりました。擬人化したイベントにも紹介文がつけられるので、リンクしてくれた一人一人がイベントをどう解釈しているのかがわかって、今までにないフィードバックが得られた」(石元氏)

 ところで、キャンドルナイトの対象は非ネット世代も含まれている。このためネットで評判を作り出して、ネットから地域へ飛び火させて伝えるか、という点にも気を遣う必要がある。「ネットからネットワーカーに飛び火して、何かアクションを起こす。するとそれが地域の新聞やラジオ、テレビの話題に上り、さらに告知が広まって盛り上がる。アクションを起こす人には、デザインや告知の方法などの面で、どうやったら人の集まり方が変わるか、話題になるか、といったノウハウを伝えていくことも必要だと思っている」(石元氏)

 これはつまり、東京にいる人が作ったイベントを、地域で再現可能であるかどうか、参加して実感が得られるかどうか、といったアクティビティやそれにまつわる情報のデザインが必要であることを示していて、石元氏の言葉を借りれば、ネットで伝搬していったものが「消費可能であるかどうか」という点に意識を傾けることでもある。

 ではどのようにすれば活動や情報を伝えることができるのだろうか。キーワードは可視化ではないか。先週ご紹介した武蔵工業大学の小池先生は「デジタル化、ヴァーチャル化で自由さを手に入れている一方で、情報をデザインするときに、何を可視化するかという点を意識するのは重要だ」と語っていた。キャンドルナイトは何を可視化していたのだろうか。石元君にぶつけてみたところ、こんな答えが返ってきた。

 「キャンドルナイトのネット活用は人の活動を可視化したものだ。参加者同士がお互いにこのイベントに参加することを確認しあうメディアになっていたし、それがスタッフにも見える形になっている。だからこそ、スタッフは参加者が増えてきたことに感動もするし、モチベーションも上がったのではないか。他にも情報やアートワーク、コミュニケーション、関係性など、様々なものをキャンドルナイトでは可視化してきている。しかし本当は、可視化ではなく“非可視化”だ。大切な人と過ごす時間であったり、環境に気遣うといった意識であったり、生の体験など、見えないものに気付くためのきっかけ作り。そのためにメディアを使えるようにするし、その足がかりとしてインターネットがある」(石元氏)

 もちろんキャンドルナイトは来年2005年も行われるそうだ。3年目になり、今度は世界に向けて発信していきたいと考えているそうだ。キャンドルスケープも日本地図から世界地図にする予定だという。ネットを使って始まったNPOの活動が、ライブをやったり、テレビと組んだりしながらどのように大きくなっていくのか。そしてそのときのネットのポジショニングはどうなるのか。注目したいと思う。

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