コンピュータの利用者数は2010年までに10億人に達する見込みだが、新たにネット接続が可能になったばかりの国や地域でPCの販売から利益を上げるのは容易なことではなさそうだ。
今日およそ6億6000〜7000万人と言われるPCユーザー数は、2010年までに10億人に到達、あるいはそれを突破すると予想されている。アナリストらはこの急増の最大の要因として、中国、ロシア、インドといった新興国における新規利用者の増加を挙げている。
MicrosoftのCEO、Steve Ballmerは最近、同社の成長の可能性について概説した電子メールを従業員に送ったが、そのなかで同氏は次のように書いている。「世界のPCユーザー数が6億人を超えるまでに20年以上の年月を要した。2010年までには、この数が10億人に達すると私は予想している。その要因として、新興市場、新しいシナリオ、フォームファクタの出現が挙げられる」
しかし、新興国でコンピュータを売り込むのは容易なことではない。貧困、不安定なエネルギー供給、言語の多様性、現地の慣習、教育水準など、すべてが大きな障害となり得る。しかも、時間の経過とともに、これらの問題はさらに困難の度合いを増し、逆に対処しやすくなるとは考えられない。
米調査会社IDCのアナリスト、Roger Kayは「これは最初の10億人のユーザーについての問題ではなく、その後に続くユーザーの問題だ」と語る。
これらの新興市場に進出するため、各企業は米国国際開発庁(USAID)や国際連合といった組織と協力して、一種の国造り計画を作成するケースが多くなっている。たとえばMicrosoftは、「Local Economic Development Program for Software」と呼ばれる構想を立ち上げている。この構想では、同社の社員が新興国の政府関係者に、現地の大学でのハイテクプログラムの構築の仕方や知的財産法などについて助言を行うものだ。このプログラムは現在ブラジルを含む8カ国で実施されている。
「輸出業への参入を希望する企業は多いが、それにはまず企業内部の能力を確立する必要がある」と語るのは、Microsoftのワールドワイド・パブリックセクター部門担当シニアバイスプレジデント、Maggie Wilderotterだ。同氏は職務の一環で、ブラジルのLuiz Inacio Lula da Silva大統領やヨルダンの閣僚らと会談している。
低価格で販売できる製品を開発することも課題の1つだ。価格と取り扱いという2つの課題に取り組むための初期の試みとしては、Hewlett-Packard(HP)の441システムが挙げられる。南アフリカで発売されたこのコンピュータは、キーボード、マウス、モニターをそれぞれ4つずつ備え、同時に4人のユーザーが様々な現地語モードで利用することが可能だ。Linuxベースのこのコンピュータはいずれ東南アジアでも発売される可能性がある。
HPの新興市場向けソリューション担当バイスプレジデント、Maureen Conwayによれば、(新興国の)国家経済にハイテクが導入されれば、それらの国々のGDPは成長し(HPにとって)将来の顧客拡大につながるという。
「しかし、どこかでこの好循環を始めなければならない。低コストのアクセスデバイスは製品開発にとって非常に重要だ」(Conway)
またHPは南アフリカで廃校となった大学を買い取り、そこで現地の人々を対象に、コールセンターでの応対の仕方やPCの修理の訓練を行っている。9月には同国のThabo Mbeki大統領が、HPの講演するイベントで演説を行う予定だ。
IntelやMicrosoftなども、新興国向けに低価格のパーツやソフトウェア、音声/手書き文字認識技術を開発している。
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